パズルノート


4月25日(日)リレーション

球体と、それに繋がる文字との方向関係がヒントのリンク系パズル。

一つの文字が球体と繋がることによって、ようやくヒントとしての価値が現われる。
例えば、「前」が球体と繋がっていたら、その線が繋がっている方向が前と定義され、
もう一本は、定義された位置関係と合うように繋がなくてはならないので
「後」は反対側から繋がなくてはならない。といった感じである。

アイデアは決して悪くないと思うのだが、問題は非常に作りづらかった。
原因はヒントの影響する範囲が狭いことにある。
球体から線を伸ばす二方向さえ合っていれば後はどうにでもなるというのは
唯一解にするための制約としては弱い。弱すぎる。

結果、全てのマスを通過するという解き筋がメインになり、
肝心の方向関係という素材があまり活かされていない問題になってしまった。
リンク系以外にもう少し巧い使い方があったかもしれない。

評価できる点があるとすれば、それはリンクの構造である。
二つの端と一つの中央部分、合わせて三つの記号を繋ぎ、
それらがある種の関係を満たしていなければならない。
というパターンはここまで作ってきたリンク系パズルの中にはなかった。

ここで重要なのは、「端」と「間」に置かれる記号の"種類"が
異なるという点である。今の場合「端」に置かれているのは
方向という意味をもつ記号であり、間に置かれているのは単なるマーカーである。

「端」とその「間」の記号の関係さえ決めてしまえばそれですぐパズルになるので
これ以降、ネタに困る度に似たような構造を持つパズルをいくつか作っている。

例えば「長短リンク」や「同異つなぎ」などがそれである。
「長短リンク」では「リレーション」と同じく、
「間」がマーカーの役目を果たし、そこまでの距離が長いか短いかを表す
「長」、「短」の記号を繋ぐのであるが、「同異つなぎ」では、
端がマーカー(赤、青の二種類)になっており、
間にはそれらのマーカーが同じ色かどうかを表す記号「同」、「異」の
記号が繋がれた構造になっている。

いくつか作っている割りにはどれもあまりパッとしない感じである。
原因は最初に書いたように全マス通過がメインで無理矢理問題として
成立させているような問題が多いからなのだが、
簡単に新しいルールが実現できるのでネタに困ったときには重宝している。


7月13日(日)ペア・ブロック 二つのブロックをペアにして、パズル面を分割していくパズル。 同じ面積のブロックは辺で接しないように二つのブロックを くっつけて一つのブロックにしていくというパズルである。 以前にも紹介したが、「カットブロック」と対を成している。 ちなみに「カットブロック」は、 同じ面積のブロックが接しないように、一つのブロックを 切り分けて二つにするというパズルである。 というわけで、以前のアイデアを拝借してちょこっと変えただけの あまりアイデアを要していないルールである。 良く言えば(良いのか?)システマチックに作られたパズルといえる。 あまりアイデアを投入していないので、これでは悪いと思い(別に悪くはない)、 やはり同じような作りの「クイーンズ」とセットにして公開することにした。 新しいパズルを作るには大きく分けて二つのやり方がある。 一つは既に他のパズルで使われているルール及び形式を材料に、 その組み合わせ方を工夫して新しいものを作るというもので、 もう一つは、パズルの材料自体を新しく作り出すというものである。 自分が目指しているのは後者なのだが、 当然そちらの方が作る上での難易度が高いので、 いつも上手くいくとは限らない。 解いてみて非常に面倒だったり、簡単なものしかできなかったり、 唯一解にするのが異常に困難であることがほとんどである。 サブルールを工夫して、何とかバランス調整を試みるのだが、 それでもダメな場合は、残念ながらアイデアは白紙に戻ることになる。 私はギャンブルが嫌いなのだが、 新しいパズルのアイデアを練ることに時間を費やすことは ある意味ギャンブル行為なのである。 とまあ、こんな事情でどうしても問題ができないときには、 前者の手法を用いてルールを組み立てるのであるが、 そうやって作られた問題の方が解いてみて面白く感じてしまうことがある。 苦労してアイデアを投入して作ったパズルほど面白ければ、 パズルの評価も簡単なのに、世の中上手く行かないものである。
7月6日(日)クイーンズ チェスの「クイーン」を互いに効き筋に入らないように、 どのブロック内にも一つずつ配置するパズル。 プログラムの世界でも有名なNクイーン問題をペンシルパズル風に アレンジしたパズルである。 古典的なパズルが背景にあるという箇所は「ウォッチマン」に 共通するところがあるが、解く感じも良く似ている。 本家Nクイーン問題に興味がある方は、 検索をかけると色々出てくるのでそちらをどうぞ。 と、このパズルの解説は早々と切り上げてパズルの分類の最終回に入る。 これまでは記号を配置していく、線をつなぐ、盤面を分けるなど、 解答方法、解の構造による分類を行ってみた。 この分類法は、それらの線引きを上手く定義してやれば そこそこ一貫した分類法を与えてくれそうな気もするが、 いくら同じ記号を入れていくパズルだからといって クロスワードなどの言葉の知識が必要なパズルと ナンプレなどの数理系パズルを一まとめにしてしまうのはやはり気が引ける。 という理由で、ちょっと別のところに置いておきたいと思い これらの分類法から分けておいたのが以下のものである。 「リスト」:リストにある文字列や図形をヒントにするもの。 「ワード」:解く上で言語的な知識を要するもの。 大袈裟に書いた割にはたった二つである。 これはうちで作られているパズルの種類が偏っているためだろう。 分類という観点から見ると、これらを同じ階層で論じるのは 明らかに不適当である。リスト系でありながらワード系に分類される パズルなどいくらでもあるので、「分類」になっていない。 言語の知識を要するかどうかという分類は、生物の分類に例えると 動物か植物かというレベルの話だろう。 一方、「リスト」という分類はヒントの形式に関わるもので 解の構造による分類よりも詳細なレベルの分類に置かれるべき ものであると思う。 もっと詳しく「クイーンズ」を分類してみると、 数理界,配置門,方陣綱,排他目,有区分科,不定形亜科,単一記号属,クイーンズ種 といった感じだろうか。(適当)
6月29日(日)ドットリンク 同じ長さの線分が接しないように、二つの黒丸をペアにして繋いでいくパズル。 大学祭や某ネット予選など、いろいろあってすっかり間が空いてしまった。 これはパズルの解説であって、断じて日記ではないので いつ見ても意味が取れるように書かねばならない。 従ってこういう時事ネタを書くのはあまり好ましくないのだが、 書いてしまったものは仕方がない。 と、弁解しつつパズルの解説に入ろうと思う。 今回は非常に小ネタなリンク系パズルである。 使われている要素は端点の位置だけというシンプルな盤面ながら 解かせ方のバリエーションが豊富で作る側としてはなかなか楽しめる。 最初は黒丸だけではなく2種類の記号を用いており、 「異なる記号の間を繋ぐ」というルールで問題を作ろうとしていた。 そこで思いついたのが、「同じ長さの線分は接しない」というルールではなく 「2点間を結ぶ経路全体を見たときに同じ長さの線分が存在しない」 というルールである。 この時点では全ての頂点を通過するというルールはなかった。 これで問題を作ってみたのだが、どうも線の引き方が単調になってしまう。 そこで、全体から接する二つの線分間へとルールを緩和することにし、 その代わりに、おなじみの全ての頂点を通過するというルールを加えた。 こうすることで、より入り組んだ線の引き方が可能となり、 記号も一種類で良いだろうということで現在のルールに落ち着いたわけである。 ループ系やメイズ系への転用も考えたのだが、 このルールはやはりリンク系が一番しっくりくるように感じる。 これは個人的な好みなのだが、私は小ネタが好きである。 こんなの他に誰も思いつかないだろうと思えるような斬新なパズルも好きなのだが、 誰が思いついても不思議はないのに何故かこれまで出てこなかったという ほんのちょっとしたアイデアで、今までにない解き味が実現されているのを見ると、 その手があったかと感動してしまう。 と、ここまで書いて思い出したのだが、 今回はパズルの分類について述べるということになっていた気がする。 遥か昔のことなので忘れてしまっていた。 まあ、書くことが温存できるならそれに越したことはないのだが。 というわけなので、再び次回へ。
5月25日(日)ニア・ナンバー 「隣接する数字が1違いの個所」の個数をヒントに、各列1〜Nの数字を 一つずつ配置するパズル。 「パズル研究室」で公開されている中では、かなりの難問の部類に入る。 画面上で解くのは困難だろう。 これまで何度もあまり好きではないと書いてきた、 「個数」がヒントになっているパズルであるが、 何の個数であるかという所が、単に「物」の個数ではなく、 ある「状態」の個数を表しているようなパズルには好意的である。 どんな「状態」を数えるかで、全く違う様々なパズルができる。 「物」の個数を数える場合では、それだけで新しい問題を作るのは これだけネタが出尽くした今ではもはや不可能だろう。 他のアイデアがメインのパズルを唯一解にするための 単なる補助として使われる場合がほとんどである。 しかし、「状態」の個数はそれだけで新しい問題を作り得る。 元々、その列に入る〜の個数というのは、非常に強力な制約であるので それだけで十分に問題を成立させることができるのである。 「物」と「状態」の違いをもう少しはっきりと述べると、 「物」の方は、「物」と「物」との間の何かしらの制約を 与えるルールが他にあって、それとは無関係に個数という数量が 存在するわけであるが、「状態」の方は、それらが一つのルールに 統一されているのである。 解りやすいように「状態」の例を挙げると、例えば曲がり角というのがある。 曲がり角は二本の線が点から異なる方向に伸びている個所である。 線が一本では何の意味も持たない、その線に対しもう一本の線が どのように位置しているのか、それらの関係が「状態」である。 ある位置の周囲の記号の配置によって「状態」が変化し、「状態」の個数が変化する。 ある個所の記号が決定されると、個数の条件を満たすように「状態」を 制限するために周囲の記号の配置が限定される。 これらの一連の流れが一つのルールにより行われているという点が、 無駄がなく洗練されており、私には非常に魅力的に感じられるのである。 話は変わって、前回「ナンバーリング」に引き続き、 ここでのパズルの分類法について述べるつもりだったが、 既に結構な量が書けてしまったので、今回はお休みということで 次回に回すことにしよう。 ここでの分類法の説明も次回でたぶん最終回である。 その次から再び書くネタに困ると思うと今から気分が重い。
5月18日(日)ナンバーリング パズル面に123の数字を入れてループを作るパズル。 線やブロックなど単一の記号ではなく、 複数の記号をつなげてループを作るパズルを作ろうと思い考えてみた。 この場合、使用する記号として最初に思いつくのはやはり「数字」だろう。 一番最初のルールは、1、22、333、を繰り返してループを繋いでいく というものだったのだが、特に順序の制限をつけなくとも良さそうだったので、 その数だけ連続させるというルールのみを残すことにした。 これでいけると思ったのだが、どうも思うように問題が作れないので、 再び修正、当初は3のL字を許していたのだが、 これを禁止するために一直線のルールを追加して完成。 基本的な解法はブロックを配置してループを作るタイプのパズルと同じで、 それらの繋ぎ方を制限するための補助として数字の要素が入っている感じである。 数字に関係なく、ループの形状が決定する状況が頻出するために、 珍しく親切な設計で、「何か判らないけどとにかく数字の入るマス」 をチェックできるようにしてみた。 他のパズルでもつけた方が便利かもしれないが、 かえって邪魔に感じることもあるので標準装備には至っていない。 と、このパズルに関してはこれだけ書けば十分だろう。 それでは、前回「プラスアロー」、前々回「ボーダーランド」に引き続き、 ここで使用しているパズルの分類の説明に入ろう。 今回は、割と数も多いのにすっかり忘れられていた「伸ばし」、 それと「分割」についてである。どちらも盤面を侵略していく要素が 強いので、まとめて紹介するにはちょうど良かったかもしれない。 「伸ばし」:盤面の記号から、一本、または複数の線を伸ばすもの。 線はただ伸びているだけで、他の記号等と繋がっていないのが特徴。 「リンク」と違って、線の端を制限するものがないため、 それらによる別解を決定させることのできる比較的強い条件が必要である。 一般には「線の長さ」を指定することで、この問題をクリアしているものが 多いように感じられる。 他の方法としては、全てのマスに線が伸びるという条件を付加し、 線の長さ以外の特徴を制限することが考えられる。 「分割」:文字通り、盤面を壁で区切っていくつかの断片に分割していくもの。 「伸ばし」と同様に、”このマスを含むのは、ここしかない” という解法が使える場合が多い。 「伸ばし」と違うのは、基本的に「分割」には「余り」という概念が存在しない という点である。つまり「伸ばし」に属するパズルには、線が通らないマスが 存在することもあるが、どのブロックにも属さないマスというのは作り得ない。 周りに境界が存在すれば、そこは自動的に「ブロック」となってしまうのである。 「分割」は、ブロックの内部に含まれる記号がそのブロックの形状等を 制限している場合が多いが、そのような記号を含まない、 記号の束縛を受けないブロックの存在を許すようなルールも考えられる。 そういう意味でなら、どこにも属さないマスというのは可能である。 そのようなマスを積極的に利用して、新しい分割パズルが作れそうな気もする。 私は文章を書くのが苦手で、この解説を書くのも面倒で仕方がないが、 何を書こうか考えているうちに新しいネタが浮かぶこともあるので、 こういう時間もひょっとしたら重要なのかもしれない。
5月11日(日)プラスアロー 数字の入った盤面に矢印を配置していく、足し算を使ったパズル。 「同じ向きの矢印は接しない」というサブルールを用いて 何かできないだろうかと考え始めて思いついたのが、 矢印の先にヒントを配置して、それらは矢印の置かれているマスの 数字の和を表すといったものである。 作り手の視点から見ると、配置しておく数字の選び方などの自由度が高く 割と作り易い(途中で破綻しにくい)ルールであるが、 解き手から見ると、チェックしなければならないパターンが多く、 少々面倒に思うかもしれない。 特にこれ以上書くことも思いつかないので、前回の続きを書こうと思う。 このネタでもうしばらく続けられれば楽で良いのだが。 前回はマスの中に記号を書き込んでいくタイプのパズルの ここでの分類法の説明をしてみた。 今回は線を繋ぐタイプの分類に関する説明をしよう。 ここでは、大体次のようなものに分けている。 「木」、「メイズ」、「リンク」、「ループ」、 それぞれのおおまかな定義を次に示す。 「木」:解となる線の構造が木のようになっているもの。 簡単に言えば、全体が一つに繋がっており、枝分かれ個所が存在するもの。 「メイズ」:スタートとゴールに当たる点が存在し、 解として、それら二点間が線で結ばれているもの。 ※例外として、線を引くタイプとは別に壁を配置して迷路構造を復元するタイプも これに含めている。 「リンク」:盤面に散在する複数の記号を組にして、それらを線で結ぶもの。 「ループ」:盤面に、一つまたは複数のループを作るもの。 「メイズ」、「リンク」、「ループ」には一般に枝分かれ個所は存在しないが、 それらのお約束を意識的に崩して作られているパズルも存在する。 例えば「リンク」で三つ以上の要素を枝分かれ個所を中央に挟んで 繋ぐパズルというのが考えられる。 しかし、ジョイント部の位置をずらすなどの別解が発生しやすくなるので、 それをクリアーするためのルール設定が必要である。 よく使われている型には、ルールが理解しやすい、問題が作りやすいなどの それなりの理由があるので、それを破るのであればそれに見合った設定やルールを 考えなければ、ただ奇を衒っただけの問題になってしまうだろう。 個人的には、アイデアが活かされていれば新しい「型」にこだわる必要は ないと思うが、その一方で見たこともない新しいジャンルが生まれることを 期待してやまない。
4月29日(火)ボーダーランド どの領域にも家が一つずつ入るように一筆書きで境界線を引くパズル。 外壁に接する境界が引かれないことはすぐにわかるので、 実質の盤面はこのサイズより一回り小さいことになる。 それをごまかすために、スケールを少々大きめにしてみた。 それから、「パワープラント」で一回使っただけの家(矢印ではない)を 再利用できたことには、まあ満足している。 このパズルのコンセプトは分割とメイズの融合である。 上手く表現できたかは定かでないが、 結果として、難しいのか易しいのかよくわからない 変な解き心地のパズルができた気がする。 これは個人的には成功している。 「ボーダーランド」は、分割とメイズの境界線上に位置するパズルを 意図して作られたパズルであるが、そもそも分割とは、メイズとは何なのだろうか? この機会に今回はパズルの分類について考えてみようと思う。 ここでの分類は、基本的にパズルの解の構造に着目して行われている。 世間一般でも、大体この手法によって分類されていると思うので、 それらとの整合を考慮した分類を採用してみたというわけである。 例としてこれまでにどんなジャンルがあったか、書き出してみよう。 木、状態決定、配置、配列、分割、メイズ、リスト、リンク、ループ、ワード とまあ、こんなところだが非常に適当な分け方である。 始めに断っておくが、これは私の分類の定義である。 (定義と呼べるほど厳密ではないが) 個人が勝手に決めたことにどれ程の意味があるのかわからないが、 稲葉マニア(いるのか?)にはお勧めである。 それでは各々について若干の説明を加えるとしよう。 まず、どれもマスの中に記号を入れていくという点で似通っている 「配置」、「配列」、「状態決定」は何を意味しているのか。 配列:各列に入る記号が予めルールとして全て決められているもので、 それらをどういう順序で並べるかが主になっているもの。 空白マスが存在することもある。 配置:各列に入る記号が決められておらず、 どこに何を配置するかが主となっているもの。空白マスが存在することもある。 状態決定:各列に入る記号が決められておらず、 ある位置に何が入るかが主となっているもの。空白マスは存在しない。 簡単に言えば、 「配列」はある記号を”どこに”入れるか、 「配置」は”どんな”記号を”どこに”入れるか、 「状態決定」はある位置に”どんな”記号を入れるかに、 それぞれ重きを置いたパズルという意味である。 と、ここまで書いて気付いたのだが、既にかなりの量になってしまっている。 よく考えもせず書き出してしまったので、このままでは当分終わりそうにない。 というわけで、次回「プラスアローの巻」へ続く。
4月22日(火)コアプレース 同じ列、及び辺で接するブロック内に同色が入らないようにコアを配置するパズル。 グラフ理論における有名な問題がモチーフになっている。 地図上の隣り合う国は異なる色で塗るという制約の下で全ての国を 塗り分けるには最低何色あれば十分かというあれである。 本パズルの特徴は、いつもなら「各列一つずつ全ての色を配置する」 といきそうなところだが、それではなく「同じ列に同じ色は入らない」という ルールだけに留まっている点にある。 最初は、前者のルールが用いられていたのだが、 あまりにも制約が強すぎたために非常に簡単になってしまった。 またそのパターンかと思われるかも知れないが、 ルールの調整が必要なときは、基本的に 「制約が強すぎて問題が簡単になり過ぎる」、もしくは 「制約が弱すぎて問題の作成が不可能」な場合のどちらかなので、仕方がない。 それで、後者のルールに制約を緩和したわけであるが、 前者のルールを採用した場合の解決策がないこともない。 色の数を4色から増やせば良いのである。 色の数が増えるに従って、接するブロックに同色は入らないという 制約の効果が薄まってくるので、これなら問題が作れそうである。 現在のルールでは、四色問題の持ち味がベースになっており、 隣接するブロックの関係からまずブロックの色が決定されて、 それからブロック内の自由度を制限するのに列に関するルールが 使われているといった感じであるが、 他方では、四色問題のルールが補助にまわっている印象を受ける。 どちらが良いかの判断が難しいが、うちに置かれるパズルとしては、 「同じ列に同じ色が入らない」というだけのルールは他で使われていないので、 こっちを採用したくなるのが人情というものだろうか。 特に他に書くこともないので、四色問題に関する補足を少々。 正解は予想通り四色なのだが、膨大な場合分けの作業を行うために コンピュータが使われており、現在でもそれらを一つずつチェックしていく という方法でしか証明は与えられていない(たぶん)。 従って、四色問題の真偽が確定した今でも、 四色で十分だという洞察を与えるようなエレガントな証明を見つけることは、 非常に価値があることなのである。 一発逆転を狙いたい人は一度挑戦してみてはいかがだろうか。
4月13日(日)MAXレングス そのマスから伸びる線の最長の直線部分の長さがヒントのリンク系パズル。 パズルのルールで「最大」というキーワードは割と使われることが多い。 最大を決定する範囲としては、列またはブロックがすぐに思いつくが、 このパズルでは、一本の線が最大値を選出する単位として用いられている。 最初はなかなか面白いアイデアだと思ったのだが、実際に作ってみると どうやって長い線分を確保するかと1から伸びる線をジグザグにする ということだけで、半端な数字のヒントがあまり活かされていない気がした。 2や3などは、一カ所その長さの線分を作ってしまいさえすれば 他はほとんど自由に伸ばせてしまえるので、ヒントとしての価値はあまりない。 と、このパズル自体の作者の評価はそれほど高くないのだが、 「最大」を決定する単位を工夫する、というルール作りの手法を提示したという点は 今後、ネタが尽きたときなどに大いに活かされることだろう。 そして、それは今から早速役に立つ。 というわけで今回は「最大」をテーマにどんなルールができるか考えてみよう。 まずは、例としてこの「MAXレングス」の元ネタを取り上げてみる。 もともとはブロック内で最も多くのマスが直線上に連結している個所を ヒントにするというルールで問題を作ろうとしていたのだが、 別解がどうしようもないほど発生してしまい、断念した。 先に書いたように「最大」を扱うルールの弱点は、 その最大の個所さえ決ってしまえばあとはどうにでもなるという点である。 問題を成立させるだけなら何とかなるだろうが、 パズルとしてある程度難解なものにするためには 大きな数と小さな数を絡めて、よほど上手く作らないといけない。 この部分を補うためには、かなり強いサブルールを用いる必要がある。 「MAXレングス」も、当初のブロックタイプはあきらめて 全ての頂点を通過するリンク系に変更することにした。 結果として、問題を解くメインとなる解法は、当初の予定から外れて どちらかといえば全てのリンク系に共通の解き筋になってしまい、 最大線分のヒントの方が補助になってしまった感がある。 このパズルは最大ヒントをあまり上手く活かしているとは言い難いが、 これを非常に上手く利用しているパズルとして「最大値お絵かき」がある。 簡単に言えば最も多く連続して塗りつぶすマスの数がヒントの「お絵かきロジック」 なのだが、このパズルのルールの巧みなところは、黒と白の役割を対等なものにし、 黒い部分だけでなく白い部分のヒントも併用している点である。 即ち、最も多く連続して「塗りつぶさない」マスの数も同時に表示しているのである。 列における複数の要素の最大値をヒントに用いて、 さらにそれらが一方でなければもう一方であるという関係であるために、 それらが互いに牽制し合うという状況が非常に面白い。 このパズルの二番煎じという感があるが、一つ思いついた。 各列の連続して塗りつぶすマスの数の「最大」と「最小」をヒントにして 問題ができないだろうか。 どちらかというと実際に問題を作るより、ルールを設計する方が好きなので、 私はアイデアだけ出して、それで問題を作ってくれる人がいたら便利なのだが。
4月9日(水)ストライプループ その方向に何色が見えるかをヒントに赤と黒の壁を交互につないでループを作るパズル。 斎藤貴彦さんの「ループロープ」をヒントに思いついたパズル。 「ループロープ」は全ての穴に上下交互にロープを通していくというルール。 斎藤さんにはこの場を借りてお礼申し上げます。 ちなみにうちから斎藤さんのサイト「論理パズル」へのリンクが 張られているので、興味のある方は是非訪れてみましょう。 私は最初に思いついたアイデアからそれほど変更することなく問題を作ることが多い。 (これが普通かどうかはサンプルが少なすぎて判断できない)、 しかし、このパズルは私としては珍しく最初のアイデアからかなり推敲を加えている。 当初のアイデアはどういうものだったかというと、線ではなく一マス分を占める 2色のブロックを交互に配置していくというものであった。 やはり「ループロープ」の解構造をそのまま拝借するのは躊躇われたのだろう。 この場合、チェス盤を想像してもらえば容易にわかると思うが、 位置によって、どちらの色が置かれるかは最初から全て判ってしまう。 それで問題が作れないということはないが、これはヒントと組み合わせれば かなり強い制約になる。これで問題を作ろうとすると非常に大きな面積が必要である。 これはノートが勿体ない、ということでブロックはやめて おとなしく線を使うことにした。 線の場合はブロックと違って、同じ位置に線が引かれる場合でも その「方向」によって、色が変わってくるのである。 この「位置」と「方向」と「色」の間の関係に気が付かないとなかなか解けない。 2色ではなく3色にすればブロックを用いた場合でも、 位置によって色が決定されてしまうという問題は回避できるのだが、 今度は散在するブロック間の繋がりに大きなヒントが生じてしまう。 つまり2色の場合、基本的にどう繋げても交互に並ぶが、3色以上になると 接続個所の色合わせを行わなければならず、これが(余分な)ヒントになり、 問題を作るには再び広い面積が必要になる。 もう一つの問題として、3色以上になるとループに右回り左回りの要素が入ってくる。 そのことが悪いというわけではないが、今回のルールを活かすためには 不要な要素であると判断し、2色に落ち着いた。 また、当初のアイデアでは矢印ではなく対角線の入った正方形を用いて その個所から4方向の色を全て表示していたのだが、これも余分なヒントが 発生しすぎるので、一方向だけで十分と判断して矢印に変更した。 前段階のタイプのヒントもデザイン的には悪くないと思う。 ちなみに「ムーンライト」はこのタイプのヒント形式の成功例である。 ここまで、余分、余分といって気前良くヒントになるものを 切り捨ててきたわけだが、今度は逆に問題が作れなくなってしまった。 「ループロープ」に似すぎないように、全ての頂点を通過するというルール を使わずに何とかしようとしていたのだが、 どうにもならずに結局それを採用し、何とか完成に至った。 変なプライドは捨てた方が良い。 本日の教訓「良いものはパクれ」
3月26日(水)大小分割 どちら側のブロックが大きいかを示す不等号をヒントにパズル面を長方形に分割するパズル。 最初はルール2だけで作れるかと思っていたのだが、 ちょっと作ってみて、すぐに不可能だと思い、 ブロックの形状に制限を加えるべくルール1を書き加えた。 それでも実際に作ってみると意外に難しくさらにルール3を添加することにした。 カットブロックのところでも書いたが、このルールはあまり好きではない。 サブルールとして用いるには、少々重い気がするのである。 頑張ればルール1と2だけで作れないこともないと思うが、 その場合、どうしてもヒントの数が多くなり過ぎてしまうと思う。 このパズルのヒント、「不等号」はその両側のブロックのどちらが大きいかを 表示しているわけであるが、その性質ゆえにブロックの境界上に配置せざるをえない。 ところが、このパズルは境界を決定していくを目的とするパズルである。 そのため、このパズルにおいて不等号の個所を増やすということは、 単に問題を解くための「ヒント」を増やすというだけではなく、 解空間の制限に直結してしまっているのである。 従って、むやみやたらとヒントを増やすわけにもいかず、 ルール3を持ち出して処理するに至ったというわけである。 このパズルはあまり見掛けないと思われる「境界」タイプのヒントが用いられている。 広い意味では、前回の「連番プレース」なども境界がヒントになっているが、 ここでは、ある境界があって、その両側の領域間の何らかの関係がそこに 表示されているものという意味で用いている。 このタイプのヒントとして他にどういうものがあるか考えてみよう。 例えば「カラフルボーダー」は、このタイプのパズルである。 そこでは領域に付されたカラーに着目し、それらを混ぜ合わせたものを ヒントとして表示している。 そして最近作成したばかりの「ツインルーム」もまさにこのタイプである。 「大小分割」と同じく領域の面積を用いているのだが、 行う演算はそれらの大小比較ではなく、それらの和である。 これから和ではなく差を取るというパターンもすぐに思いつくが、 和と比べると作るのは難しいかもしれない。 面積だけではなく、その形状の情報も加えたヒントも考えられる。 その両側のブロックを組み合わせて作ることが可能な図形を表示するのである。 (このアイデアは他の表現法により「ユニットブロック」として実現されている) しかし面積が大きくなると、ヒントスペースの確保が難しいだろう。 また、境界上という限られたスペースに無理やり複雑なヒントを押し込めるの もどうかと思うので、やはりこのタイプにはシンプルな演算が好ましいと思う。 ヒントの形式からルールを考えていくのも一つの方法であるが、 重要なのは、その表現法を用いることで肝心の元のアイデアが活かされているか どうかである。もしそうでないなら、そのアイデアをより活かすような表現法を 探したほうが良いだろう。 と、適当にまとめておこう。
3月21日(金)連番プレース ブロック内に入る数字は連番になることをヒントに解くマジックスクエア風パズル。 各列1からNが一つずつ入るおなじみのタイプのパズルである。 以前に作った「ストレートチェーン」が「ジョイントナンプレ」のルールに 酷似していたため(またそれか)、再び連番という概念を使ってパズルを作ってみた。 普段はこれまでに使ったアイデアはなるべく使わないようにしているのだが、 そういうわけなので仕方がない。 それで前作と比べるとどうかと問われたら、どう答えるか難しいところであるが、 より作者の好みに近いパズルになったと答えておこう。 前作「ストレートチェーン」は、わかりにくく説明すると 線で繋がっている部分全体が連番になっているという条件の他に 隣り合う数字が連続していなければならないという制約があった。 これはマスの繋がりが一次元的で自然な順序が定義されているからこそ 課すことのできる制約である。 一方、連番プレースはブロック全体として連番になっていさえすれば良く、 隣接ブロック間に条件は課せられていない。 前者の場合、一つの固まりの中の二カ所の数字が明らかになれば他の数字も 一意的に決定されてしまうのだが、後者の場合はあるブロック内部の数字が どれだけ明らかにされようが、その内部の情報だけではそれが入る位置を 決定することができない。 これらのヒントの情報量の差から、同じくらいの難度を実現するならば 「ストレートチェーン」はヒント(パズル面に引かれている線)を少なめに、 「連番プレース」は、ヒント(マスの間のつながり)を多めにする必要がある。 私は、小さな盤面でちまちま解くパズルが好きなので、 一つ一つのヒントの情報が大きく、一気に解けていくパズルよりは、 非常に弱いいくつかのヒントが連携して少しずつ解けていくパズルの方が好ましい。 (それでいてヒントの数は少なめの方が良いという我儘な性格である。) 「ストレートチェーン」も標準から見ればちまちま感の強いパズルであるが、 「連番プレース」は、そのちまちま感がさらに強まったパズルと言えるだろう。
3月12日(水)ブレイクダウン 塗るマスの数と、それらがいくつの固まりになるかがヒントの絵が出るパズル。 一度は作ってみたかった「絵が出る」パズルである。 「ブレイクダウン」の制作動機は、お絵かきロジックのヒントから ヒント数字の個数情報だけを残し、それらのうちわけの情報を消しても パズルを成立させられるのではないかと考えたところが出発点である。 作った後でどこかで見たような気がしたのだが、その悪い予感は的中してしまった。 以前、某雑誌の投稿コーナーで優秀作として取り上げられた 「プチお絵かき」にルールが酷似している。 「部屋割りロジック」のときもそうであったのだが、 私は絵が出るパズルとはどうも相性が良くないようである。 (むしろ良いのかもしれない。) 「プチお絵かき」のルールはどういうものかというと、 黒く塗るマスの数と、各列の白と黒の固まりの数の和がヒントになっている。 後者のヒントをもう少しわかりやすく説明するために例をあげると、 例えば「3」ならば、黒と白が3つの領域に分かれていることを表す。 つまり、端から白い領域が続き、その後黒い領域、白い領域と続く場合と、 逆に黒から始まり、その後白、黒と続く場合と二通りあるわけである。 「ブレイクダウン」のNのヒントは、「プチお絵かき」の2N、または2N+1 のヒントに対応しており、逆に「プチお絵かき」のNのヒントは 「ブレイクダウン」のN/2またはN/2+1(端数は切り捨て)に 対応していることがわかる。 先ほど酷似していると書いたが、これらの違いは感覚的にどちらがわかりやすいか というレベルのものではなくパズルの解き方に大きく影響している。 「プチお絵かき」のルールでは端の色がわかればもう一方の端の色を 確定させられるというテクニックが使えるが、「ブレイクダウン」では使えない。 もちろん「ブレイクダウン」独自の解法もいくつか存在するだろう。 というわけなので大目に見てやってください。
3月5日(水)クロスループ 各列一本ずつ線を入れてループを作るパズル。 自分がこれまで作ってきたパズルの中で一、二を争うほど印象が薄い。 問題を見てようやく、そういえばこんなのもあったなと思うぐらいの勢いである。 ちゃんと解説ができるか心配だが、いつも大したことは書いてないので問題はない。 書き出せばいつも何とかなっているので、さっさと解説に入る。 どの列にも一本ずつ線が入るという構造は面白いと思う。 最初は線の途中での交差もOKだったのだが、 それだと問題が作りにくかったので、両端のみで交差させることにした。 盤面に「横棒」、「縦棒」、「交差」の三種類を配置していくわけだが、 このパズルを考えたときは確かそっちから入った気がする。 どういうことかというと、まず盤面に何を入れていくかを決めてから それに合わせてルールを設計したのである。 隣接したマスとの「つながり」を表現する記号を配置していくタイプとしては 後に「T字」や「L字」を配置していくパズルを考えてみたのだが、 そっちはそれらの特性を活かしたルールを思いつくことができなかった。 良いアイデアが出れば今後使うかも知れない。 先に出したのは上手く形にならなかった例だが、この手法で成功しているものもある。 「矢印」を配置するパズルを作ろうということで、いくつかルールを考案しているし、 「色つきの図形」や、「じゃんけん」、「N極S極」などもこの例である。 他にも「男」と「女」、「親」と「子」、「猫」と「ネズミ」、 など様々なものが考えられるが、これらの持っている特性を どうルールに活かすかが思案のしどころである。 例えば「親」と「子」を配置していくパズルを作るのであれば、 「親」と「子」の持つ特性は何かを考えることで、 「親」は単体で配置できるが、「子」は必ず「親」と隣接していなければならない などのルールを思いつくことができる。 何もないところから抽象的なルールを考案するのは難しいが、 身近なところに転がっている素材をヒントにし、それを出発点とすることで 理解しやすい自然なルールが生まれたりするのである。 と、そんなことで上手くいけば苦労はないのだが。
2月26日(水)母音プレース 子音だけが入った盤面に母音を入れてクロスワードを復元するパズル。 「パズル研究室」初の言語の知識を必要とするパズルである。 「ダブレットリンク」は言葉を使用しているが、日本語を知らなくとも解ける。 クロスワードを復元するタイプのパズルは数多く作られており、 この「母音プレース」も、いかにも既に作られていそうなパズルなのだが、 私はこれまでに見たことがなかったので作ってみた。 クロスワードをあまり作ったことがないことに加えて、 比較的使用頻度が高い拗音、促音、長音、撥音が使えないという制限があり、 解が唯一になるように言葉を選択していくのには苦労させられた。 特に他の言葉と交差しない個所や、短い言葉同士が交差している個所などは 思いもよらない言葉ができたりするので要注意である。 自分では理数パズルの方が性に合っていると思うのだが、 ワードパズルも意外に色々と考えている。 例えば、マスに入った二つの文字からどちらかを選択するというパズルや、 マスの一つ一つに三択クイズが割り当てられており、 正解の前に書かれた文字を入れていくとクロスワードが復元される というものを作ったことがある。 後者は、何か一つテーマを決めてクロスワードを作りたいときに テーマに沿った問題だけを盤面とは無関係に使用することができるという利点がある。 誰でも簡単につくれるので企業の宣伝用にどうだろう。 話は変わるが、言語系という以外にも、 このパズルが初ということが存在するのだが、 お気付きになられただろうか? 何と、偶然にもこれまで「パズル研究室」には 「O」の段で始まる名前のパズルが一つもなかったのだ。 どうでも良いことだが、他に書く機会がないと思われたので 「母音プレース」の解説に乗じて指摘してみた。
2月19日(水)イン・アウト ブロックを「何回」通過するかがヒントの迷路系パズル。 これもなかなか良いアイデアである。 良いアイデアを思いついたときは、 実際に問題を作る前から何となく「作れそう」な感じがするのだが、 これを思いついたときはまさにそんな感じであった。 後にこのパズルのループ版を作ったのだが、絶対にそっちの方が良いと思う。 スタートやゴールのような特殊な点があると そこでは「出入り」という表現が使えなくなってしまうのだ。 ルールでは適当に誤魔化しているが、これはやはり気になる点である。 それは、当初からわかっていた。 しかし少し前に「エッジパターン」を作ったばかりで、 ループものを連続させるのはどうかと思い、 SとGをつなぐタイプにしたというわけである。 くだらない理由で、わざわざ迷路系に向かないアイデアを 迷路系に使ってしまったことを今も後悔している。 それでは実際の問題に関する説明に入るが、 ここで作られている問題は、ブロックの大きさを全て一致させている。 もっと色々な大きさのブロックを混在させた方が面白いと思うが 敢えて、ブロックの大きさを固定している。 それは何故か。 その方が見た目が美しいという点が一つ挙げられるだろう。 それが一般的な見方ではないかと思う。 しかし私は、それ以上に「作者の負担を減らす」という役割が 大きいように感じられるのである。 完全に何も無い状態からパズル面に配置するヒントを決めていく過程では、 常にそれが最善であるのかという疑問が付きまとう。 無数の可能性の中から自由意思によってそれらを選んでいかねばならない。 解くときにはそのようなことはない。それが正解であることが確信できれば それが最善なのである。この確実さを積み重ねていくという感覚こそが パズルを解くことを快感たらしめている一つの要因ではないかと思う。 そこである程度機械的に盤面を決定し、 それに合わせて問題を作っていくという手法が有効である。 自らに人工的に制限を課し、「問題を作る」という問題を解いていく。 この状況では問題を成立させるための道筋はかなり限定されてくる。 その中からベストの選択を決定するのはそれほど困難なことではない。 こうすることで、「最善(最初の拘束が適当なので虚構の最善であるが)」 の決定を続けて安心して制作が行えるのである。 これは決して手抜きの正当化などではない。
2月5日(水)ツートン分割 ブロック内で白い部分と黒い部分が分断されないように分割していくパズル。 分割パズルの手法としては、シンプルで良いアイデアだと思うが、 これだけのルールで問題を作るのにはなかなか苦労させられた。 このパズルはブロックの面積が4に固定されている。 もっと面積が大きい方がこのルールに向いているかなとも思う。 その方が同色部分を連結させるという条件が厳しくなるからである。 しかし、その代わりに「必ず二色入る」というルールが あまり意味をなさなくなってくる。 ここを積極的に使いたいのであれば、4が一番バランスの取れた位置だろう。 「必ず二色入る」というルールを取り払ってしまえば問題ないが、 黒や白だけのブロックでは、「つながっている」という感じがしない。 どう表現すれば良いのかわからないが、それは何となく気持が悪い。 複数の記号が内部に存在して初めて「連結」は意味を持つのである。 このパズルのメインであるその部分を確実に表現するために、 このルールは譲れない。 分割パズルには、面積や形状に関して制限があるものが多い。 今回はこれらについてどんな手法が可能かを考えてみることにしよう。 まず面積に関する制限であるが、これはただ面積を固定する以外にない気がする。 例えばどのブロックの面積もn以上(以下)というルールや、 どの面積も奇数、偶数、nの倍数などのルールで 問題は作れないこともないが、あまり意味はなさそうである。 これを完璧に活かしたルールでもあれば別だが。 次に形状に関する制限であるが、これは非常に面白い研究対象である。 何か面白い形状を見つければそれだけでパズルになり得る。 長方形への分割はよく見掛ける。これらをさらに制限して、正方形や 一辺が1の長方形への分割というのもある。 L字、T字、十字、2×2のブロックを含まない図形など まだまだいろいろなパターンが考えられるので、 他にはどんな分類法があるのか皆も探してみよう。 使えそうなものがあったら教えてみよう。
1月29日(水)セパレーション 同じ文字を結ぶルートが存在しないように、各列ABCを一つずつ配置するパズル。 各列一つずつ○○を配置していくという、お馴染のパターンである。 しかし、解かせていく論理は割と新鮮だと思う。 気付けば非常に単純な仕組みで解けるのだが、 どこから手をつけて良いのかが非常に気付きにくく、 意外な所から解けていくパズルというのが作者の感想である。 ちなみにこれは誉めている。 最初はABCではなく、○とブロックを配置するもので、 ブロックによって区切られた領域には ○が「一つだけ」入るようにするという設定であった。 区切られた領域には複数の○は入らない、というのは即ち、 ○同士を結ぶルートは存在しないということである。 同じものを結ぶルートは存在しないというルールは、 この「一つだけ」入るというルールから二次的に生まれたものなのである。 ルールをこのように読み替えることで、 記号による区切る、区切られるの関係を対等なものにできることに気付き、 ○とブロックはやめてABCを用いることにした。 この考え方は「パーコレーション」でも用いられている。 当初のアイデアも決して悪くはないと思う。 その場合は記号の性質が異なるので、 ヒントとして記号を予め入れておくことなく問題を成立させられる(たぶん)。 この性質を持つことは、(私の感覚では)ポイントが高い。 ルールに対して全ての記号が対称性をもつ場合、 全ての記号を一斉に入れ替える別解が存在するためこれは不可能である。 もう一つ、区切られた領域には○が「一つだけ」入るという 複数の性質を持つ記号ならではのルールが存在するが、 これはやり方次第で非常に面白く使えると思う。 余談だが、解説の最後に落ちをつける必要がないことに今更ながら気付いた。
1月26日(日)エッジパターン 「同じ文字は周囲に引かれる線のパターンが同じになる」というルールでループを作るパズル。 「同じ記号」が「同じ状態」に対応している いわゆる(ここでしか使われていないが)「覆面」系のパズルである。 以前「○×ループの巻」で多少触れたが、 今回はそれについてをメインに話を進めるとしよう。 この要素を含んでいるパズルは、「同じものは同じ」というルール以外に、 「異なるものは異なる」というルールが一緒に用いられている場合が多い。 この二つは同じことを言っているように見えるが、同値ではない。 前者では、「異なっているもの」が「同じ」になっても構わないし、 後者では、「同じもの」が「異なって」いても構わないのである。 この手のパズルの一番の基本である「覆面算」も、 同じ文字には同じ数字が入るというルールだけでなく、 異なる文字には異なる数字が入るというルールが加えられているのが普通だろう。 この「エッジパターン」も、二つを組み合わせて使っているタイプである。 このタイプのパズルの著しい特徴は 問題を解いていく過程で、すでに正体が明らかになった記号の周辺のみに 影響を及ぼす局所的なヒントの増加だけでなく、 パターン数に限りがある場合(普通は存在する)、 「パターンの候補の減少」という大域的なヒントが得られるという点である。 この性質は「ナンバークロス」で積極的に使われているのを見ることができる。 このお陰で、最初のうちは文字の候補が幾つか存在するような小さな文字列でも 使用可能な文字が減少するにつれ、特定が可能となってくるわけである。 前者のルールだけが使われているパズルとしては、 手前味噌で申し訳ないが「ジェミニブロック」がある。 ブロックのマス数が多いと、向きも含めた形状のパターン数は 非常に大きなものになるので、上で書いた効果はあまり期待できなさそうである。 まあ、単に思い付かなかっただけで、意図して外したものではないのだが。 後者が単体で使われているものは見たことがないので、 それだけで、パズルを作ってみるのも面白いかも知れない。
1月15日(水)イーブンプレース 全ての列とブロック内において、赤丸と青丸の個数が一致するように それらを配置するパズル。 ルールのシンプルさで勝負といった感じの作品である。 夏原氏が考案した「○×イーブンパズル」というパズルがアイデアの基になっている。 そちらは、○や×が入った盤面から、いくつかの2×2の領域を塗り潰すことで ○×を取り除き、結果として各列の○×の個数を一致させるというルールである。 最初はこれだけのルールで解を一意に定め、かつある程度悩ませるような 問題を成立させることができるのだろうかと諦め半分で作ってみたのだが、 人間やればできるもので、これだけでちゃんとできてしまった。 「各列○○、各ブロック内でも○○」というルールの構造に、 ナンバープレースに似た洗練さが感じられるような気がしないでもない。 某雑誌のコメントにもそう書いたのでせっかくだから載せておこう。 このパズルも多分にもれず、作るのが非常に難しかった。 問題の作りやすさや解かせ方のバリエーションを考えるのであれば、 もともとのルールが少ないので、「同色の丸同士は接しない」ぐらいの サブルールなら追加しても良いだろうと思う。 個人的には、ルールをシンプルにするためなら、 少々の面白さを犠牲にしても構わないという変な信念があるので オリジナルのままの方が好ましいのだが。 「同数」という概念は、他にもいろいろと応用がききそうである。 例えば、「ブロック内の○○の個数が等しくなるように分割」する などというのはどうだろうか。 ブロックの面積は指定しておく必要がある。6マスぐらいが適当だろう。 このルールで、二通りの記号と空きマスが存在する盤面を分割していく。 ブロックにはペアの個数が、0、1、2、3の4パターンあり、 それらのどれに分割するかが悩み所である。 思いついたことを適当に書いてみたが、 なかなか良さそうなアイデアになってしまった。これはメモしておこう。
1月8日(水)メイズメーカー 行き止まりまでの距離を表す数字をヒントに迷路を復元するパズル。 迷路復元パズルの第二段である。 ルール的には数字ヒントを使用しない前作「リメイズ」の方が気に入っている。 数字を使わないパズルの方が、そのアイデアのエッセンスのみを抽出している 感じがして洗練されているように思えるからである。 と、このパズルに対してそれほど好意的ではないようなことを書いてみたが 実際に解いてみると(作ったのは自分なのだが) 如何にして行き止まりやそこに至るまでの通路を確保するかなど、 解かせるパターンが豊富でこれはこれで結構楽しめる。 「リメイズ」とは全く違うパズルと言って良い。 「リメイズ」との大きな違いは行き止まりの位置が明らかになっていない点である。 その分の情報を補うため、 分岐点に「行き止まりまでの距離」という情報を付加してみたというのが この「メイズメーカー」のアイデアの核である。 これら両方のヒントを併用しても良いと思う。 つまり、「行き止まり」の位置情報を残しつつ、 行き止まりまでの距離も同時にヒントとして使用するのである。 解き心地がどうなるかはともかく、この方が少なくとも作りやすいだろう。 簡単になりそうであれば、解答図である迷路の分岐点を少なくして ヒント個所を減らすことで難度を調整すれば良さそうである。 これも「リメイズ」と同じく別解が非常に発生しやすいので 作るのには苦労させられた。 私の思いつくパズルは、どうしてこう作りにくいものが多いのだろうか、 もはや嫌がらせとしか思えない。 当初の予定では、ヒント配置を全て対称形の綺麗な形にするはずだったのだが、 あまりの困難ぶりにやむなく断念した。 そんな中でSTAGE4だけは奇跡的にヒントが対称な問題を成立させる ことに成功したので、せめてこの問題だけでも見て頂きたい。 (そのためには結局全ての問題を解く必要がある。)
12月25日(水)カラフルボーダー 「境界」が何色になるかをヒントに、パズル面を赤、青、黄に塗り分けるパズル。 「カラークロス」に続く、色を用いたパズル第二段である。 前作では色のついた線と線が交わる点の色がヒントになっていたが、 本作では、面と面が接触する個所の線の色がヒントになっている。 点、線ときたら、今度は面で色が交わるパズルを作りたくなるが、 実は以前に、そのようなルールの「カラーユニット」というパズルを作成している。 しかし結構一発ネタ的なアイデアなので、ここでの公開には不向きであると思う。 さて、何か新しいヒントの形態はないかと考えていたときに思い付いたのが、 この「辺」をヒントにするというアイデアである。 当初は、同色を4ブロックの固まりにするのではなく、 同じ色が全体で一つながりになるという解の構造を持たせようとしていた。 これで問題を成立させるため、 緑、橙、紫の他に「同色」を表す「=」なる記号を使い、 2×2の固まりは存在しないというお馴染のルールも加えたのだが、 やはり「端」の処理が難しく、現在の4ブロックルールを採用することにした。 これにより、かなり問題が作りやすくなった。 それでも、普通に問題を作ると最後の方でかなりの確率で破綻してしまう。 3色しか用いていないので、行き当たりばったりで色を決めては、 それら全てに接触してしまう領域ができてしまうのは当然である。 ここで作り方を変更し、まず解答を予め用意しておいてから ヒントとなる辺を配置していくことにした。 最悪でも、全ての辺を入れておけば必ず唯一解にできるというのが この手のパズルの利点である。 こうして無事完成。 見た目も綺麗で、割と気に入っている。 先ほど少し触れた、面で色が交わるパズルであるが、 うちにある「グラデーション」というパズルを使えないかと考えている。 「グラデーション」は長方形がいくつ重なっているかがヒントのパズルである。 この「いくつ重なっているか」という情報を色に置き換えてみようというわけだ。 いかにもすでにありそうなパズルだが、なかなか面白そうなので そのうち作ってみようと思う。そのうち。
12月11日(水)バラバラウォール 数字のマスから全部長さが異なるように、壁を伸ばすパズル。 クレシェンドの更新日と比べて一ヶ月ほど間が空いているが、 これは8月に院試があったためである。 「サムコネクション」の解説でも書いた通り、 過去のネタを全て使い切ってしまったので しばらく更新を休むための良い口実となり、ちょうど良かった。 一ヶ月もの沈黙を破って更新されたパズルの割には、 普段のパズルと比べてアイデアが突出しているというわけではないが、 それは真面目に勉強していた証拠であると、とりあえず言っておく。 それでは、本パズルの解説に入る。 うちのパズルとしては珍しい、伸ばし系のパズル。 見ての通り、基本となっているのは「ウォールロジック」である。 それから長さの指定を取り払って「伸ばす方向の数」だけで 問題ができないだろうかと思い、作ってみた。 このパズルの名前にもなっている 壁の長さが「バラバラ」になるというルールは、 「伸ばす方向の数」というヒントだけで問題を成立させるために 後から添加したものであるが、 そちらのルールがメインになってしまった感がある。 伸ばす長さが不定のパズルは別解が発生しやすく、 そのために「バラバラ」のルールを加えたにも関わらず 解を一意に定めるのが非常に困難であった。 それでも妙なプライドから、 STAGE3と4はヒント配置をなんとか対称形に仕上げた。 STAGE4は、完成までに何度作り直したか覚えていない。 あまりにも破綻するので、普段使っている「パズルノート」 のスペースがもったいないと思い、他の紙に書いていた気がする。 このパズルはSTAGE1を最後に作ったのだが、 これも意外に時間がかかった。 一体何にそんなにこだわっていたのかは記憶にないが、 数字をなるべくくっつけないように均等に配置する。 数字の種類をバラつかせる。とかその辺のことだったと思う。 明らかに一から作った方が早いと思うのだが、 気に入った手筋を壊すのが惜しくて、それを残したいがために こういった無駄な努力をすることが良くある。 それを貫き通せれば別に構わないのだが、 ”不可能”であることを確認して諦めることが良くある。 これがパズル作りで一番辛いところである。
12月8日(日)クレシェンド 端から順に数が大きくなるように数字をつなぐパズル。 「大なり小なりプレース」という、端から順に数が大きくなるように 数字を配置していくパズルのアイデアをリンク系(どちらかというと分割に近いが) で実現しようと思い作ってみたのがこれである。 たった今思い付いたのだが、 今回は、「すでにあるパズルの応用」をテーマに考えてみようと思う。 (書くことがなくて困っていたので丁度良い。) 新しいパズルを、完全に無の状態から自分一人で作るのは非常に困難である。 自分でも新しいルールのパズルを作りたいのだけど、 なかなかアイデアが出ないとお困りの方も大勢居られるのではないだろうか。(反語) そんなとき、人の作ったパズルからアイデアを拝借するというのも パズル作りにおいて有効な手段である。 私自身はそういう手法があまり好きではないが、 その割には、そうせざるをえない状況にたびたび陥っており、 そうして作られたパズルは結構ある。 そんな経験をもとに、ネタに困ったときの簡単なテクニックを紹介しよう。 その1:記号を配置していくパズルなどで、 各列○○や、ブロック内では○○、というルールをよく見掛ける。 これらはそのまま分割系パズルとして応用できるものが多い。 上の○○の部分を使って、「ブロック内で○○となるように分割する。」 というルールにするのである。 ちなみに「クレシェンド」はこのパターンである。 逆に、分割系パズルを配置系パズルにすることも考えられる。 その2:分割系のパズルで、壁に関する情報をヒントにするものがある。 こういったパズルの場合、 壁ではなく引かれる線に対して、そのヒントを適用することで ループやメイズものへの応用が考えられる。 これもまた逆のパターンもありえる。 ぱっと思い付くのはこのくらいである。 ここで、自分の名誉のために一つだけ言っておきたいが、 これまでそうして作ってきたものの中で、 あらゆる点でオリジナルより劣っていると思われるような 改造の仕方はしていないと断言できる。いや、むしろ断言したい。 以上をふまえた上で、「クレシェンド」の発展形を考えてみよう。 端から順に数が小さくなるように数字をつなぐパズル 名付けて「デクレシェンド」なんてどうだろうか。(反語)
11月27日(水)Lモード 縦と横のどちらが長いかをヒントにパズル面をL字に分割するパズル。 このパズル、今のルールに落ち着くまでにかなり試行錯誤をしている。 最初は「縦と横のどちらが長いかをヒントに長方形に分割するパズル」であった。 しかし簡単なものしかできなかったので(「サーチャー」の説明を参照。)、 このネタはしばらく寝かせておいたのだが、 ある日、パズル面をL字に分割することを思い付いた。 それでL字の角にヒントがあるというルールで一問作ってみたのだが、 長方形の場合と同じく、簡単になりすぎてしまった。 そこで、今度はヒントは角に入らなくても良いというルールで作ってみたのだが、 今度は解を一意にするのが非常に難しい。世の中、上手くいかないものである。 仕方がないので、後半は「ヒント配置の美」を切り捨て、 とりあえず問題を成立させることに重点を置くことにし、何とか完成させた。 この「L字に分割」というのは、いろいろ応用できる。 L字の特徴は、あるマスから2方向に伸びているという点である。 この特徴を活かして、「どっちに伸びているか」をヒントにした 「矢印分割」というパズルを後に作ってみた。 数少ない「や行」で始まるという点が評価できるパズルである。 もっと直接に、向きを持ったL字をヒントにして、 「その記号を含むL字はその向きになる(腕の長さは不明)」ように分割する というパズルも考えられる。 しかし「矢印分割」に近いネタなので、そのまま出すのは躊躇われ、 L字ではなくT字で作ってみることにした。(安直) そうして作ってみたのだが、これがまた別解の嵐で どうしても唯一解のものが作れない。 T字でだめならたぶんL字で作るのは、より難しいだろう。 これがパズルの更新日のことだったので、非常に困ってしまった。 仕方なく「T字分割」を断念し、新しくパズルを作ることにした。 午後2時の時点でまだルールさえできてなかったというのは新記録である。 (その後、何とか5時半頃に無事更新作業を終えることができた。) ※「Lモード」はNTTの登録商標です。
11月20日(水)サムコネクション それらの和が線の長さと等しくなるように二つの数字を結ぶパズル。 これまた高校生のときに考案したパズルである。 ただオリジナル度が弱く感じられたため、どこにも発表はしていなかった。 これを公開する気になったのは、特に目新しいアイデアは入っていないが、 ルールがシンプルで問題も作り易そうだったからである。 また、より切実な理由としてネタに困っていたからという説もある。 こう書くと、作者にとってあまり思い入れのないパズルのように 感じられるかもしれないが、意外にも非常に思い入れの深いパズルなのである。 HP上でオリジナルパズルの公開を始めてしばらくの間は、 これまでに作ったパズルがいくつかあるので、 新しいネタがないときは、上述のようにそれを使うことで 何とか切り抜けることができた。 しかし、そんなものがいつまでも続くわけがない。 配分を考えずに無謀なペースで更新を続けた結果 一周年を迎えることなくストックが尽きてしまった。 そして、その最後の砦がこの「サムコネクション」だったわけである。 それからは過去の作品は一切使っていない。(あれば即使用) 真の意味で「パズル研究室」が始まったと言えるだろう。 以降、従来のペースを維持するためには 常にアイデアを出し続けなければならないという過酷な状況に陥り、 そして今も陥り続けている。(これだけ長い間続いているのは奇跡といって良い。) 蛇足かもしれないが、パズルの説明を少々。 二つの数字を結ぶタイプのパズルとしては他に、 それらの差を利用する。どちらか一方だけが意味を持つ。 などかなりの応用が考えられる。 前者では、単純に「線の長さがそれらの差と一致する」として 使う他に、一般に「差」はそれほど大きな数にならないので、 「白黒碁石つなぎ」(そういうパズルがある)の拡張として、 差の回数だけ線が曲がってつながるといった使い方もできる。 後者では、「どっちリンク」というパズルを作ってみた。 二つの数字を結ぶ線の長さがどっちかの数字と一致するという 名前そのままのパズルである。
11月13日(水)ナンバーブロック どのブロック内にも、1からそのブロックの面積までの数を一つずつ配置するパズル。 オリジナルのパズル作りを本格的(?)に始めた頃に作ったパズル。 当時(高校一年生)は、一日一問を目標にパズルを作ろうと張り切っていた。 結果、一日一問ペースは一週間ぐらいしか持たなかったが、 その間に「阿弥陀」、「パワープラント」、 そして、この「ナンバーブロック」を作ることができた。 目標は実現不可能なくらいがちょうど良いと思う。 このパズル、ルールは非常にシンプルで好感がもてるのだが、 解を一意に成立させるのがなかなか難しい。 最初はヒントなしでも1マスブロックを使って解かせられると 思っていたのだが、そうするとどれもスタートが似通ってしまうので 仕方なくヒント数字を入れることにした。(このパターン多いな。) これなら「ヒント配置の美」さえ考慮しなければ、 最悪、全てのマスにヒントを入れれば唯一解にすることができるので、 問題を作るのはそれほど難しくないのだが、 ある程度の難度を保証しつつ問題を作るのは困難であった。 「難しい問題を作るのが難しいパズル」と言えよう。 当然マスの数が小さいブロックの方が、入る数の候補が少ないため これを巧く組み合わせて解を一意に決定させていくのが基本であるが、 小さいブロックの数が多すぎると今度は、同じ数ばかりが増えて 唯一どころか解を持たなくなってしまうのである。 具体的には、どのブロックにも少なくとも「1」が含まれるので、 これが増えすぎるとどうしても周囲8マスで接してしまう状況が起こる。 かといって大きいブロックばかりを使用すると今度は、 解いても解の連鎖が起こらないので解き進めていく過程が作れない。 この辺りのバランスが非常に厄介なのである。 そのため当時は、一問しか作ることができなかった。 しかし、あれから6年以上経っているので、 パズル作りに関する技術も相当に上がっているだろうと思い、 新しく問題を作って公開することにした。 ちなみにSTAGE4が高一のときに作ったものであるが、それが一番できが良い。
11月6日(水)クロックプレース どの列も時計の針が90度ずつ回転するように、時計を配置するパズル。 「繰り返し」というアイデアを使いたくて作ってみた。 最初は「時計」ではなく、123を使おうと思っていたのだが、 ルールに「123を繰り返す」と書くと、 どの列も1から始まらなければならないように取れなくもない。 ちょっと考えればそんなことは不可能であることがすぐにわかる (最悪、例題をみれば理解できる)のだが、 一応、厳密に書くならばルールでそのことに触れる必要があるだろう。 そのことを付け加えようと思ったのだが、 なかなか簡潔かつ正確な文章が思いつかないので、 数字を使う代わりに矢印の回転を用いることにした。 これまでは3から1への不自然な移行が存在したため、 次の数字は何であるかを指定するための統一的な表現がなかったのだが、 これにより不連続な点を解消し、「90度ずつ時計回りに回転」という表現で、 いかなる状態においても次の状態を示せるようになり、 これによって当初の困難をも解消することができた。 ただ、問題点も出てきた。 これを用いると周期が4に固定されてしまうのである。 120度ずつ矢印を回転させれば周期が3になるのでは、 と思う方もおられるかもしれないが、それは無理である。 なぜなら120度の矢印を書くのは難しい。 これをやるためには、点の位置を細かく計算しなければならない。 そんな面倒なことはやってられないので、90度を使うことに決めた。 これで問題が作れるかと思ったのだが、解をなかなか一意に決定できない。 やむをえず「その列に入る時計の数」を導入したのだが、あまりに安易な解決である。 その後、各列に入る個数を固定するなどの代替案を考えたのだが、 自由度を残しつつ解を一意に定めることのできる微妙なサブルールが見つからない。 良い改良案があれば是非、教えて欲しい。
11月4日(月)パラレルサーキット その名の通り並列回路を構築するパズル。並列部分には数字の数だけ豆電球を繋ぐ。 一風変わったループ系のパズルである。 「並列」というアイデアを「回路」を用いて実現してみた。 というよりは、「並列」が出てきた時点で必然的に「回路」は出てくるだろう。 ここで盤面に線を引いていくタイプのパズルについて、 各マスから伸びている線の本数という視点から分類してみよう。 「パラレルサーキット」は、どのマスからも2本、または3本の線が伸びている。 このパズルでは、ルール上並列部分がそれ以上分かれることを禁止しているが、 並列部分がさらに分岐するような構造を持つものもこのタイプに属する。 うちで一番多いのは、どのマスからも2本ずつ線が伸びているタイプである。 このタイプは全てのマスを通る一つまたは複数のループという構造をもつ。 これが、どのマスからも2本、または0本ならば、「全てのマスを通過する」 という条件を持たないパズルになる。 どのマスからも1本ずつ線を伸ばすと、隣り合う2マスをペアにしていく という構造が生まれる。うちにある「ペア・マーク」が、見た目は分割系であるが これと同値な構造をもっている。 どのマスからも1本、または2本の線を伸ばすと、端を持ついくつかの線ができる。 この構造は非常に自由度が高いので、通常は端を明らかにしたリンク系であるが、 線を直線やL字などに限定することで、端を明らかにしなくても 問題を成立させることは可能である。 こういったことは普段はあまり気にとめないと思う。 我々は、一目見れば「ループ」とわかるが、ではどのようなものを「ループ」 と呼ぶのか、「ループ」の持つ特徴は何か、こういったことを考えることで逆に、 新しい構造を持つような図形を創造することが可能となってくる。 この考え方は新しいパズルを考案する上で非常に役に立つ。 例えばどのマスからも1本、または3本ずつ線を伸ばしたらどういう構造をもつのか、 その特徴を活かすようなパズルはできないか、といったアプローチが可能である。 久々に良いことを書いた気がする。
11月1日(金)パーキングプレース 駐車場に見立てたパズル面に、条件を満たすように車を配置していくパズル。 せっかく現実の要素を使っているのだから 単なる記号を配置していくだけでは味気ないだろうと思い、 頑張って渋々車を描いてみたのだが、自分で見てもあまりそれらしく見えない。 空しい努力の跡だけが残るなかなか痛々しいデザインのパズルである。 うちで公開しているパズルの中では、1、2を争うルールの多さを誇る。 駐車場をモチーフにすることで、ルールをある程度納得できるものにしているが、 そうでなければ許可しないと思う。 このパズルはある数学の問題が基になっている。 どんなものかというと、 どの車からも出口にいけるような経路が存在するという条件の下で、 最大どれだけ駐車場に車を配置することが可能であるかという問題である。 これは非常に面白い問題なので、駐車場の形状と出口を適当に決めて いろいろと遊んでみてはいかがだろうか。 これを作ったのは中学と高校の間の春休み(この言葉は適切だろうか)であるが、 今考えるとこの最大ルールだけでパズルを作った方が良かったのではないかと思う。 「出口までの距離」というアイデアもそれ単体で使えるのではないか。 しつこいようだが、私はシンプルなルールのパズルを非常に好む。 パズルはメインとなるルールを一つ持ってきて、 あとはなるべく簡素なルールだけで仕上げるのがベストだと信じている。 その方がネタが節約できるという利点もあるが、 それは支持する理由のたかだか7割ぐらいである。
10月30日(水)カットブロック 同じ面積のブロックが接しないようにブロックを二つに切り分けるパズル。 「切る」というアイデアを使いたくて作ってみたパズル。 全てのブロックを二つに分けることで解を得るというところまでは良いのだが、 当然それだけでは問題にならないので、 それを活かすような制約をどうするかで非常に悩んだ。 悩んだ末に、「同じ面積のブロックは接しない」というルールを選んだ。 選んだというよりはそれ以外には思い付かなかったという方がより正確である。 個人的にはこのルールはあまり好きではないのだが、他に思い付かないのならば 仕方がない。これが悩んでいた個所である。 気に入らないルールの割にはこの後も何度か使用している。 その一つに、このパズルと対をなす「ペア・ブロック」というものがあり、 そちらは切るのではなく二つのブロックをくっつけて、 その結果「同じ面積のブロックは接しない」ようにするものである。 まあ、あまり説明すると今度「ペア・ブロック」について書くときに ネタがなくなってしまうのでやめておく。 ここで、「切る」というアイデアを使って 他にどのようなものができるかを考えてみよう。 以前に切断個所をつないでループにするというのを考えたことがある。 ループになるという制約は非常に強いので、こちらを使えば 「同じ面積のブロックは接しない」以外のルールを使って問題を作ることができる。 そのときのルールは「どのブロックも面積が半分になるように切る」 というものであったが、非常に簡単になってしまった。 もう少し弱い制約を選ぶ必要がありそうである。 他に、このパズルの拡張として一番簡単なのは、 切り分ける個数について一般化する方法である。 全てのブロック内に数字を入れて、その個数に切り分けることで、 条件を満たすようにするのである。 これは「ペア・ブロック」にも(以下略)
10月23日(水)サムボックス マスの中に一つまたは二つの数字を入れていくパズル。 左上の数字はそのマスに入る数字の和を表す。 ぱっと見ワード系のパズルのように見えなくもないが、 数字を使ったパズルの王道、和を用いたパズルである。 ここまで意外にも一つもなかったので載せてみた。 一つのマスに複数の数字を入れるというアイデアは面白いのだが、 上限を二つに制限しているのが弱いかなと思う。 問題を作るのは若干困難になるが不可能という程ではないので、 いくらでも入れられるとした方が自然だし、 数字の分け方のバリエーションも豊富になって面白いと思う。 実際、最初に作ったときは二個までという制約はなかった。 では、なぜそんな制約をつけたのか。 もうお気付きだと思うが、アプレット上での表現の問題である。 理論上、一マスには最大1から9までの九個の数字が入り得る。 実際にはそんなことは起こらないのだが、 それを制限するルールが明確に提示されていない以上は、 それを可能にするような枠組みを用意しなければならない。 予め数字の入る場所を九マス分用意しておいて、 数字に対応した位置から詰めていくという方法もあるが、 これは数字が小さくて見にくいし、ほとんどの領域が空白になってしまう。 そして何よりプログラムが面倒である。 これらの極めて合理的な理由から、泣く泣く「二個」という上限を設けた。 また、こちら側の解答チェックを簡便にするために、 いつものようにマスをクリックすると数字が書かれるのではなく、 下から書きたい数字を選んで置いていくというタイプを用いている。 このパズルではどちらが便利かはわからないが、 記号の種類が豊富で、同じ記号を連続して書き込むことが多いパズル (カラーお絵かきロジックなど)には、その方が向いているだろう。 そんなパズルを作ったら、この形式をまた使いたいと思う。
10月9日(水)パイルアップ 下に置かれるものの方が数字が大きくなるように、 数字の書かれたブロックを積み上げていくパズル。 おなじみの「マジックスクエア」が基本ルールになっているパズルである。 このタイプのパズルで(正確には対角線は考慮しない) 「数字が上下で接するところでは上の数字の方が大きくなければならない」 というルールを用いた「頭でっかちナンプレ」というのがある。 この「パイルアップ」はその二番煎じのように思われるかもしれない。 しかし、パズル面に「重力」という概念を持ち込んで、 「下」という方向を表現し、ルールを感覚的に自然な形で理解できるようにした というのが、このパズルの見所であり、評価できる点である。 このパズルを考案したときの、パズル的に若干面白い失敗談があるので紹介しよう。 今公開されているものは、必ずどこかに数字が予め入っているのだが、 このパズルを最初に作ったときは、数字のヒントを一つも入れない方針で 問題を作成していた。 そして実際に、一つもヒント数字を入れることなく問題を唯一解になるように 作ることも可能であった。 ところが問題を全て作り終え、更新作業をしようかと思ったときに 重大な失敗に気付いた。今までどうして気付かなかったのだろうか。 それらはパズルとして成立していなかったのである。 それは何故か? 良く考えて見てほしい。 このパズルは、どの列にも1から最大の数までが一つずつ入るパズルである。 よって「最大の数」はどの横列にも一つずつ入る。 「最大の数」の下には他の数字は配置できないので、 その下には必ず「床」があるはずである。 この「床」をヒントに「最大の数」の位置を全て決めてしまえば、 そこから順に数字が小さくなるように上に積み上げていけば、 それが自動的に解となるのである。(例題を参照) しょうがないので泣く泣く問題を作り直したが、 あれをそのまま公開していたら大恥をかくところであった。
10月2日(水)禁止分割 その列に入ることが禁止されている形をヒントに、パズル面を分割するパズル。 ルールというものは、「○○をしろ」と「○○してはいけない」の2種類に 分けられると思う。多くの場合、前者が解決、勝利のための条件、目的であり、 後者は、それが簡単になり過ぎないために課せられる制約である。 そして主にサブルールとして用いられる、この「禁止」をメインにもってこよう というコンセプトの下で作られたパズルが、「禁止分割」である。 代わりに「ブロック内に星が一つずつ入るようにする」という 肯定的なサブルールを用いて難度の調整を行っている。 作った当時(高3)はそれほどのアイデアでもないと思っていたが、 今見ると、なかなか意義のある試みだったように感じる。 (感覚が退化したか進化したかどちらかである。) 当初の目的とは直接関係ないが、ブロックの形をそのままヒントとして 使うところなども見た目に楽しくてなかなか良いんじゃないかと思う。 また、このパズルは外枠にヒントがあるタイプのパズルである。 外枠ヒントが使われているパズルは、そのほとんどが「その列に入る○○の数」 のような使われ方であるが、このパズルはそうではない。 「その列に入らない形」という外枠ヒントの使い方に新たな手法を開拓している。 と、大袈裟に書いてみるほどのネタではないが、 少なくとも、外枠タイプのヒントにはどんな手法が可能であるかを、 今の私に考える気にさせてくれる作品であるとは思う。
9月25日(水)パーコレーション 各色の固まりが、ヒントとして入っている数字の大きさになるように、 赤と青に塗り分けていくパズル。 このタイトルになっている「パーコレーション」とは もののつながりに関する様々な現象を扱う理論からとった名前であり、 直訳すれば「浸透」という意味である。 「ブロックをある大きさの固まりになるように配置する」という タイプのパズルと「ブロックを配置して、ある大きさの空きマス領域を作る」 という二種類のパズルにおける「ブロック」と「空きマス」の役割を 対等なものにしたらどうなるかというコンセプトの下で作られており、 それら両方の性質を持ち合わせたパズルになっている。 このパズル、今までに作ったパズルの中ではダントツで問題が作りやすい。 最初はきちんと解くプロセスを考えつつ作っていたのだが、 全体の形が決まっていないと理詰めで解くのが困難だったので、 まず解答を作り、そこから数字の位置を微調整していくことにした。 それで適当に数字を配置したら、一回でちゃんと解ける問題ができた。 これに気を良くして、2問目、3問目、4問目と作ってみたら、 何と全て何の修正を行うことなく一回で問題が成立してしまったのである。 唯一解かどうかのチェックにかけた時間を省くと、 4問作るのに合計10分ほどしかかかっていないことになる。これは凄い。 このパズルを解くことができる人であれば、誰でも作れるはずなので 今までにパズルを作ったことがない人は、是非試してほしい。
9月18日(水)○×ループ 両端の記号までの線の長さが等しいところは○、 異なっているところは×というのをヒントにループを作るパズル。 それほど斬新なアイデアが使われているわけではないので これまたコメントを考えるのが難しいのだが、何とか頑張ってみよう。 「同じ○○は××」というルールはよく見かけるもので、 うちで扱っているパズルのルールの中で最も多く現れるキーワードも たぶんそれではないだろうか。(調べたわけではないが) そこで今回は「同じ」という概念の主な使い方をまとめてみよう。 うちで一番多そうなのが、「同じ列に同じ記号は入らない」、 「同じ記号は接しない」というものだろう。 このように配置を制限する使い方の他に、「同じ記号」は「同じ状態」に 対応する使い方も多い。この使い方で最も知られているものは覆面算だろう。 この場合は、同じ文字は同じ数字に対応するという使われ方である。 これらは同じかどうかの判断が一つの記号に対して行われているわけだが、 ある種の集合に対してそれが行われる場合も多い。 例えば「同じ(面積、形、色、etc)ブロック同士は接しない」というルールは、 マスの集まりに対してなされるものである。 この○×ループも「線の長さ」という線分の集合に対して比較がなされている。 線の集合を対象とするのであれば、長さの他に線の曲がる回数や、 ずばり線の形そのものを扱うルールが考えられうる。 「同じ○○は接しない」、「同じ○○は同じ××」のようにありふれたルールでも、 その対象とするところ、即ち何を同じと見るかという部分が斬新であれば、 これまでと違った新しいパズルを作ることが可能である。 その点で○×ループはちょっと弱いかなと思う。
9月11日(水)ハウメニー 「その方向にいくつの矢印が残るか」を意味する数字と矢印をヒントに、 いくつかの矢印を消去して条件を満たすようにするパズル。 うちにあるものの中では、なかなか珍しいデザインのパズルである。 矢印は「ディレクション」のときにすでに作ってあるので それほど面倒な作業ではなかった。 発想の原点は、矢印の方向に何種類の数字が入るかという条件のもと 数字を配置していく「何種類?」というパズルである。 これをもっと単純に「何個?」にしようと思い、作ってみた。 最初は矢印だけの盤面に数字を配置して、その方向にいくつの 「数字」が入るかというパズルを考えていた。(一部に数字のヒントを入れておく) 当然これだけではパズルにならないので、 「各列に同じ数字は入らない」などの条件が必要となる。 この逆もまた可能である。即ち、最初に数字だけを入れておき 矢印を配置していくというものである。(一部に矢印のヒントを入れておく) この場合、数字はその列にはいる「矢印の個数」を表している。 こちらの方はヒントが数字なので問題を作る際の自由度が高く、 新たな条件を付ける必要もなさそうである。 しかし、ここで盤面に何かを配置するのではなく、 数字と矢印の両方を予め入れておき、そこから取り去ることによって 条件を満たすというパターンを思い付いた。 前の二つもそれなりに面白そうではあるが、 「取り去る」ことで解くという方が、ちょっと面白いかなと思い そのときはこれを採用することにした。 前の二つはネタに困ったら使おうと思う。
9月4日(水)部屋割りロジック ブロック内は「全て塗る」か「全て塗らない」という条件のもと 各列で塗りつぶすマスの数をヒントに盤面を塗っていくパズル。 お気付きの方も多いと思うが「タイルペイント」と同じルールである。 このパズルを作ったのは作者が高校生のときで、 当時はまだ「タイルペイント」の存在を知らなかったので、 仕方がないといえば仕方がないが、オリジナルとしての価値は完全に0である。 少しでもオリジナリティを出すために、このパズルの改造を考えてみよう。 まず単純な発想ではあるが、これもカラー化が可能だと思う。 (ひょっとしたら、もうあるかも知れない) 次に、塗る「マスの数」ではなく「ブロックの数」としたらどうだろうか。 簡単に言えば、どれだけ塗ろうが同じブロック内のマスであれば、 「1」とカウントされるわけである。 問題が作れるかどうかはやってみないとわからないが、できそうな気はする。 このように自分が考案したと思ったものが、 既に作られているということが起こり得るので、 オリジナルパズルを作ろうと思ったら(普通は思わないが)、 やはり、ある程度のパズルの知識は必要であろう。 勿論それだけではなく、 多くのパズルを見ている方が新しい発想も出やすいだろうし、 ルールの微調整の段階で、これまでに見たパズルを参考にすることもできる。 しかし、新しいルールのパズルに触れられる場所は極めて少ないように感じる。 これではオリジナルパズルを作ろうと思う者もほとんど現れないだろう。 特定のパズルだけを作り、そして解いている方々のパズルに対する考え方を このサイトを通じて少しでも変えることができたら本望である。
8月23日(金)ツイストターン 数字と星とを線でつなぐパズル。数字は線が曲がる回数を表す。 「何回曲がるか」というアイデアはよく見掛けるもので、 それほど新しいものではない。 しかし、このアイデアを用いた中で基本と呼べるパズル、 即ち「何回曲がるか」という概念だけを素で扱ったものを見たことがなかったので、 それになりうるべきパズルを、ということで作ってみた。 ルールはできるだけ簡素にしたつもりだが、まだまだ減らすことは可能である。 少なくとも、「全てのマスを線が通る」というヒントはなくても問題は作れると思う。 「星」を取り去って、リンク系ではなく伸ばし系にする方法も考えられる。 そうした方がより基本的であることは間違いない。 このパズルを作ったときの出発点も、まずそこからであった。 その場合は、「全てのマスを線が通る」というルールは、 唯一解にするためにどうしても必要になってくるだろう。 そのルールで一度は作ることを試みたのだが、 それでもやはり、別解を回避することは難しく、 (例えば、線が正面からぶつかり合う場所などはどちらから伸ばしても構わない) 問題が解けていく過程を考えるのも困難であったため、 渋々もう少し制約を設けることにした。 いろいろ考えてみても、なかなか良い案が浮かばない。 「線を伸ばす長さを予めルールとして指定しておく」 というアイデアはまあまあ良かったが、 それならば伸ばし系はあきらめてリンクの形にした方が良いだろう ということで、妥協して現在の形に落ち着いた。 星同士、数字同士はつながらない、角に線が引けるなど、 いろいろ使えるので問題を作るのが楽になり、 問題としても、これはこれで十分なできだと思うが、 やはり基本は伸ばし系だと思うので、いずれ再挑戦したい。 と、言うだけで終わることが多いのだが。
8月22日(木)サーチャー その周囲の壁までの距離の総和をヒントにパズル面を 指定された面積のブロックに分割するパズル。 ついにこのパズルの解説をするときが来てしまった。 かなり思い入れの無いパズルなので書くことが思い付かない。これは困った。 思い入れの無さでいったら、これまで作った中で一、二を争うパズルである。 しょうがないのでこのパズルの生い立ちでも話すことにしよう。 それまで使えると思っていたアイデア 「縦か横どちらが長いかをヒントに長方形に分割するパズル」が、 更新日(本当はそんなもの無いのだが) の直前になって、簡単すぎる問題しかできないことが判明。 代わりに何か無いかと「パズルノート※」をパラパラめくり、 ページの隅にこのネタが書かれているのを発見した。 他に「スリザーリンク」の要領で分割するパズルがセットでメモしてあったのだが、 この「ウォールロジック」の要領で分割していくパズルの方が まだ少しは新しいかと思って採用。 時間がないので、偶然に頼りきった手法で問題の製作を開始。 パズル面を適当に4マスに分割。そこに数字を書き込んでいく、 あまりヒントが多すぎてもいけないから市松模様にでもしておくか。(適当) そして解いてみる。 おお、ちゃんと解けるではないか。 よし、一問完成。次! うーん、今度は端の方に少し別解が出てしまうな。 ちょっと数字をいじっておこう…よし、これで唯一解だ。次! 以下略 こうして「サーチャー」が完成した。 でも個人的に結構面白いんだよね、これ。 ※パズルノート…私がパズルを作る際に愛用している5ミリ方眼のノート(150円)。 このコーナーの語源にもなっている。 ちなみに、今使っているものは、パズルノートNo.7である。 (2002年8月23日現在)
8月21日(水)ストレートチェーン 線でつながっているところには連続する数字が入るように、 各列1からnまでの数字を一つずつ配置していくパズル。 最初にちょっと注釈、「線でつながっている個所は連続している」 というルールの意味は、線でつながっている一方の端から、 もう片方の端まで数が一つずつ増えている、という意味である。 (こういうことはルールに書くべきなのでは?) 見ての通りマジックスクエアの亜流作品。 メインとなるルールを表現するための土台に、 「1から一辺までの数を各列一つずつ」というルールを用いているパズルは 結構いろいろと作られている。 勿論私もいくつか作っているのだが、この手のパズルは 予めパズル面にいくつか数字を入れておく必要があるものと そうでないものとに分けられる。 方向性を持たない数字の位置関係だけをルールに組み込んだものは、前者である。 今回のパズルの場合、数字は連続してさえいれば良く、どちらかの方向に 増えていなければならないということはない。 よって最終的な解答に入っている数字の大小関係を全て反転させたものも 解になっているはずである。これは、予めいくつかの数字をヒントとして 入れておかなければ唯一解にならないことを表している。 私はどちらかというと、こうしたヒントが入っていない盤面の方が好みなのだが、 その場合はこのパズルで用いられている線に「方向」の要素をプラスすれば 内部ヒントをなくすことも可能となる。 つまり、線を矢印にすることでどちら向きに増えているかという情報を 付加することにより、総入れ替えの別解を阻止するわけである。 たった今思いついたのだが、そうした方が良かったかなと少し後悔している。
8月20日(火)えんぴつウォール 鉛筆の長さと、鉛筆から伸びる線の長さが等しくなるように、 それらを伸ばしてパズル面の全てのマスを侵略するパズル。 鉛筆という具体的な「モノ」を使った見た目に楽しいパズル。 しつこいようだが、プログラムが面倒である。 純粋にパズルの本質となる部分を取り出すと、 「真っ直ぐにしか伸びない線」(鉛筆本体)と 「曲がることが可能な線」(鉛筆から伸びる線)を それらの境界線上(鉛筆の芯)から両方向に伸ばしていくパズル と見ることができる。 普段なら、それらを「鉛筆」を使って具体化したとするところだが、 このパズルに関してはそうではない。出発点が逆なのである。 何かモノを使ったパズルができないかと考えていたときに、 パズルと縁の深い「鉛筆」を使うことを思いついた。 ちなみに私はシャープペンシル派である。 マスを大量に塗るときは芯の太い鉛筆を使ったほうが便利だが。 「鉛筆」を使うからには「そこから伸びる線」を使わない手はない。 こうして、「全てのパズル面に鉛筆と線を配置する」という パズルの大まかなイメージが出来上がり、 このとき、芯の部分をあらかじめ全て表示しておくという ヒントの形式も同時に思いついた。 これに「線の長さと鉛筆の長さは同じにする」というルールを付け加えて完成である。 いつもなら出発点となりそうなところだが、これが最後というのが面白い。 余分だとは思うが、何も入らないマスにブロックの変わりに消しゴムを 入れておくのもデザインとしては良いかもしれない。
8月19日(月)ミラープレース パズル面に鏡を配置し、「入る」から「出る」まで光線を 誘導する結構よく見かけるタイプのパズル。 それほど新しいネタではないが、うちにも一つくらいほしいと思い作ってみた。 このパズルのメインとなるべきところは、鏡をうまく配置することで マスの外部に置かれた何らかのヒントを「光線に見立てた線で結ぶ」ところである。 まず考えるべきは、何と何を結ぶかであるが、 ぱっと思いつくのはこのくらいだろう。 1.同じ記号を結ぶ。(一対一) 2.同じ記号を結ぶ。(多対多) 3.異なる記号を結ぶ。 4.数字と記号を結ぶ。 5.数字と数字を結ぶ。 若干説明を加えるならば、 「1」はAとA、BとBのように、つながる位置が決められているもの。 「2」は例えば白と黒の二種の記号を用いて白と白、黒と黒のようにつなげるもの 白と黒はそれぞれ複数個あり、どれとつながるかはわからない。 「3」は「2」において白と黒をつなげるもの。 「4」は「3」においてどちらか一方に、数字による何らかの条件を付加したもの。 「5」は複数の数字による何らかの条件を満たすようにつなぐものである。 個人的に、あるアイデアを活かすために非数字の表現が可能であるならば なるべくそちらを用いるようにしているので、「入る」と「出る」の自然な二種の 記号間を結ぶ「3」を採用することにした。 勿論これだけではパズルにならないのでサブルールが必要である。 今回は記号の種類が2種類しかないので、ヒントのバリエーションが少なく、 解を一つに定めるためにはかなり強い制約を用いなければならない。 そこで「右上がりの鏡と左上がりの鏡が各列一つずつ」というのを使ってみた。 これで製作に入ったのはいいが、とっかかりを作るのが異常なまでに難しい。 これに関しては、いくつかの鏡をヒントとして入れておくことで処理した。 メインのヒントとの併用といった形で、解答の一部を見せるヒントが 用いられるのはあまり気に入らないが、まあ良しとしよう。 これで完成。以上が、割とアイデアの飛躍を必要としないパズルの作り方である。
8月18日(日)ジョイントセル 点線で囲まれたいくつかの領域をくっつけて、 パズル面を指定された面積のブロックに分割するパズル。 うちのパズルとしては珍しく非常に簡単なパズルである。 難しい問題も作ろうとしたのだが、このルールでは不可能であった。 ルールには4マスとあるが、4マスである必然性はほとんどない。 しいていえば、当時はパズル面を正方形に統一していたため 偶×偶ならば4の倍数になるので、4マスにしただけのことである。 作る際にかなりの条件を自らに課して作ったため、 ここにある4問からバリエーションはそれほど感じられない。 指定するマスの数をもっと大きなものにして、 ブロックの形も長方形だけでなく不定形にすれば、 様々なタイプの問題が作れると思う。 「点線に沿って分割」というのは他にもいろいろ応用できると思う。 例えば、このパズルではではマスの数を指定しているが、 「いくつの領域がくっついているか」をヒントに 分割していくパズルなどが考えられる。 また、分割だけでなく点線に沿ってメイズ、ループというのもできそうである。 例えば「ブロック周辺のいくつの辺を通過するか」などが考えられる。 他にも工夫次第でいろいろと作れそうである。
8月17日(土)ABCボックス その列に入るアルファベットの配置をヒントに、ABCを書き込むパズル。 ただし、同じ文字が連続しているところは一つの文字で表されている。 他では見られない独特の解き方を持つパズルである。 ヒントの数をもっと増やすのであれば、 文字の種類をもう少しくらいなら増やしても大丈夫そうだが、 現在の3種類がベストだと思う。 作っていると、AとBのどちらでも良かったりする場所が 終盤でかなり現れるので、それを唯一に定めるためのヒントを 一箇所に固まらせることなく配置するのがなかなか厄介である。 (ヒント配置の美にも一応は気を使っているつもりである。) ?のところを□にするとABCを書き込むことができて良いのでは というアドバイスを頂いたが、全くその通りだと思う。 解き手への配慮が欠けていたと反省。 もともと紙の上で解くことを前提として作るのであれば、 ひょっとしたら気が付いたかもしれないが、 画面上で解くためのプログラムはなるべく楽な方が良いので それもあってか全く気がつかなかった。 でも、パズルの枠の外にヒントを表示するようにする作業だけでも 面倒だと思っているので、例え気がついたとしても?のままにしたと思う。 これを使ってカラーお絵かきができないかと思っているのだが、 果たしてそんなことが可能だろうか? 今はパズル性を重視しているのでヒントの数をギリギリまで 減らしているのだが、全てのヒントを見せるようにすれば うまくやればできそうな気がする。挑戦者求む!
8月16日(金)アローメイズ 「その方向を指している矢印の数」をヒントに、 スタートからゴールまで矢印をつないでいくパズル。 「方向付けられた辺」を用いたパズルである。 これを利用したものは、迷路などでよくみかける「一方通行」という アイデアを使っているものがほとんどだと思う。 予め方向付けられたルートの一部分をヒントとして表示し、 途中でそれらの向きが反転しないようにつなげていくといった具合である。 そのようなヒントが使われていないというのがこの手のパズルとしては珍しい。 製作の動機は、「その列で塗りつぶすマスの数」をヒントにスタートから ゴールまでマスを塗りつぶしてつなげていくというパズルのヒントを、 移動する方向によって分離したらどうだろうかと思ったのがきっかけである。 そのため、最初は辺ではなくマスの中に矢印を配置してつなげていくパズルであった。 しかし、その表現だとスタートとゴールを表示する際、 矢印で表示するとゴールの矢印をどちらに向ければわからないし、 SやGなどの記号にすると、スタートでどちらに進むかわかりにくく、 どうしてもそれらの処理が不自然に感じられたので、 辺の上に矢印を置いていくパズルへと変更になった。 「全ての頂点を通る」というルールが使われていないというのは、 うちにあるものとしては珍しいパズルであり、結構気にいっている。 なるべく余分なルールは使わないようにしているつもりなのだが、 これに関しては必要ないような場合でも安易に使ってしまうことが あるので大いに反省すべきだと思う。
8月15日(木)ジェミニブロック 同じアルファベットは同じ向き、同じ形のブロックの同じ位置に入るように パズル面をいくつかのブロックに分割するパズル。 これまでに考案した中で、文句なしに作るのが最も困難なパズルである。 パズルの作り方には、大雑把に分けて二つの手法がある。 一つは、解が唯一になるように、自らも解きつつ 部分的に少しずつヒントを配置していくやり方であり、 もう一つは、あらかじめ用意された解に基づきヒントを機械的に配置し、 解いてみて唯一解ならば完成という作り方である。 私の普段のパズルの作り方としては、 アマチュアといえどもパズル作家たるものそう易々と偶然に頼るわけにはいかない、 というより、偶然できたものが私が頭を悩ませて作ったものより面白くなることは 確率的に低い(ないとも言い切れない)、と思いたいので、 全体の難度バランスや、トリック等を考えつつ 少しずつ問題を構成していく、つまり前者のやり方が一般的な作り方である。 しかし、そのようなやり方ではどうしても作れないような型のパズルに たまに直面する。前者のやり方で作っていくと、 最後の最後でどうしても矛盾が起こってしまい、 一箇所ヒントをずらすと全体の構成が大きく変わってしまうような場合である。 そのような場合、後者のやり方が有効となってくる。 前者の方法である程度作って、そろそろ危険だと感じたら(ここは勘が頼り) そこまでの条件を満たす解を予め用意しておき、その解と矛盾しないように ヒントを決めていくのである。大抵の場合はこれでうまくいく。 しかし、この「ジェミニブロック」はどちらの手法も 有効でないという恐るべきパズルだった。 後者は、偶然に問題ができる可能性が高い場合(事前にそんなことわかるのか?) のみ有効な手法であるのだが、このパズルはその割合がやたら低く、 何度やっても別解が出てしまうのである。 (それも意地の悪いことに、「ぎりぎり最後の一箇所で」ということがほとんど。) そこで私は一体どうやってこの困難を乗り越えたかのか? ここで画期的な手法を思いついたほうがストーリーとしては面白いだろうが 現実にそんなうまい話があるはずもなく、 延々と何時間もかけて問題が成立するパターンを探しだした。 恐らくこのパズルを作ることはもうないだろう。
8月14日(水)ウォッチマン 縦横斜めで接しないように監視員を配置して、 全てのマスが監視されるようにするパズル。 全ての通路が監視されるように、指定された人数の監視員を配置するという 古典的なパズルが基になっている。 本作品の見所は監視員は縦横斜めで接しないというルールを用いることで、 人数の制限を取っ払っても問題が成立するようにした点である。 これにより、全体を見渡すことで初めて解けるパズル、 いわゆる大域的パズルとでもいうべきものから、 ある個所を見ることで、そこだけを部分的に確定させることが可能なパズル、 いわゆる局所的パズルとでもいうべきものへと変化を遂げている。 街並みのようなパズル面を用いて、その交差点上に監視員を配置すれば よりイメージが伝わるという意見もあった。 確かにその通りであるが、惜しいことにそうすると今度は斜めで接しない というルールが見えにくくなってしまう。 ルールのわかり易さを重視するのであれば、今のままの形にすべきであろう。 次に問題を解く上でのパズルの性質の解説に移る。 解き始めは監視員はほとんど入らない、 とりあえず監視員の入らないマスがどんどん増えていき、 それがある程度進むと一気に監視員の位置が芋づる式に確定していく というのがこのパズルの普通のシナリオである。 しかし、これはただ私の作り方が下手なだけなのかもしれない。 もう少し監視員が入るマスと入らないマスがバランスよく入るように ならないものだろうか。
8月13日(火)ペイントループ 格子点上に置かれた「周囲の塗りつぶすマスの数」をヒントに 塗りつぶしたマスをつなげてループを作るパズル 最初は格子点ではなくマスの中に数字のヒントがあったのだが、 かなり大きな面積を使わないと問題が作れなかったので 改良の末、格子点の上にヒントを置くことを思い付いた。 塗りつぶしたマスをつなげていく代わりとして、 「その周囲で線が通る頂点の数」をヒントに 辺の上に線を引いていくパズルにすることも可能であるが、 その場合、ループの部分同士が接しないというルールが 視覚的に非常にわかりにくいものになってしまう。 これを防ぐために、塗りつぶしたマスをつなげていくという表現が 用いられるわけである。 その一方で、マスを塗りつぶしてつなげていくタイプのパズルのほとんどは、 「部分同士が接しない」というルールが用いているような気がする。 なぜならば塗りつぶす領域が固まると、どうつながっているかがわかりにくくなり ループの形状が曖昧になってくるからである。 このように、ルールに応じて表現を選ぶことはパズル作りにおいて重要である。 他の例として、パズル面の要素をいくつかまとめて一つの固まりにするタイプの パズルを取り上げてみる。 このときの主な表現として、要素間を線でつなぎ、それらでつながっているもの を一つの集合とみなす場合と、要素間を線で仕切り、同じブロック内に 含まれているものを一つの集合とみなす場合がある。 前者では「つながっている部分」を解として与えるのに対し、 後者では「つながっていない部分」を解としている。 関係を反転させただけなので数学的にはこれらは等価な問題である。 しかし、一つ一つの固まりが大きくなるものでは「つながっている部分」 の数が多くなるため「つながっていない部分」を解として与えたほうが 楽だろうし、逆もまた同様である。
8月12日(月)ナンバーブランチ 一番下の根っこからスタートして、何回目の分岐点であるかを表す数字を ヒントに枝を伸ばしていくパズル。 数字をその順番どおりにつないでいく「数字つなぎ」という パズルが、発想の原点になっている。 我々が使っている数字には大きく分けて二通りの使い方がある。 一つは人数や金額のように物の集まりの個数や数量を示す場合であり、 もう一つはページ数や時刻のように順番を表す場合である。 パズルにおいて、数字が単なる記号としてではなく「数」を表すために 使われていたとしたら前者での使用がほとんどだが、 この「ナンバーブランチ」は後者の使用法である。 うちのパズルでは、他に「ルートマップ」でそれが使われている。 ぱっと見、どれが長く伸びていく数字かわからないので とっつきにくいように感じられるが、 実際に解いてみると、明らかにつながらないところは 感覚的にわかるので、引く線の候補はかなり限定される。 このような木構造を用いたパズルで、「根っこまでの距離」 をヒントに問題を作れそうなのだが、近いネタが「パーキングプレース」で 一度使われているので、使うのがちょっと躊躇われる。 順番として数を用いるパズルは工夫次第でまだいろいろ生まれそうな感じがする。
8月11日(日)ダブレットリンク 単語間に引かれている線からそれらの単語が何文字共通しているかをヒントに リストにある三文字の単語を配置していくパズル。 その頃に発表された「同音漢字リンク」というパズルの形が基になっている。 うちにあるパズルの中では数少ない言語系パズルである。 リストを用いるという点も珍しい。(今のところ、これと「サブセットリンク」だけ) リストを用いたパズルの特徴として、最初の方はやたらと難しく 単語が減っていくにしたがって急激に簡単になっていくというのがある。 これを序盤のうちでもある程度解けて、最後の方でも充分悩めるように、 如何にして安定した難度を保つかというのが作者の腕の見せどころであろう。 (このパズルでそれができているとは言わない。) これもプログラムを作るのが非常に面倒であった。しかも今後使わないであろう 形式であるため、そのやる気の出無さもひとしおである。 せっかく奇跡的に完成させることができたので、リスト系のパズルを もっと作っても良いと思うのだが、予定はない。 「しりとりラビリンス」というパズルでこの形式が使えそうなのだが、 作るのがなかなか面倒で、これまでに作ったのは一作品だけである。 ルールを簡単に説明すると、あらかじめパズル面に入っている 言葉をヒントに、リストの言葉をしりとりの要領で縦横に つないでいくというものである。 つなぐときの条件として、しりとり以外にも「熟語になる」や 「同じ読みの漢字」などの手法が考えられる。 しかし、つながるかどうかが明確であるしりとりがわかり易くて良いと思う。 いっそのこと数字を使って完全にロジカルなものにすれば良いとも思うが、 やはり言葉を使った方が楽しいだろう。
8月10日(土)血液型プレース 手前に入る二つのアルファベットから成る血液型をヒントに、A、B、Oを 配置していくまさにABCプレースのようなパズル。 高校時代に生物の授業で血液型の遺伝を習って思い付いたという 生活感溢れる(?)パズル第2段 (ちなみに第一段は「軌跡の地球」、生まれはこっちが先だが)。 少なくともABCプレースの亜流としては相当にレベルが高い作品。 アルファベットを使うことに真に必然性がある理数パズルというのは 相当に珍しいのではないだろうか、それがこのパズルの最大のウリである。 パズルとは直接関係ないのだが、私は自分の血液型を知らない。 他人からはB型だと言われ続けているのだが、 実際には母がBOのB型、父がOOのO型なので、 BOでB型である状態とOOでO型になる状態が、 シュレーディンガーの猫の如く等確率の重ね合わせの状態になっている。 観測した瞬間にどちらかの状態に収縮するのだろう。 血液型と性格に関する不毛な会話を友人達としていた際に、この話をしたところ その一人(B型)が自分はBBかBOのどちらであるかを当ててみろ というので皆でそれを考えることになった。 友人達は、彼の性格からO型の要素が入っているかどうかを検討していたが そんなことをせずとも、私には彼がBOである絶対の確信があった。 なぜなら自分の血液型を知っていたとしてもそれがBBかBOかまでを 調べている者などそうはいないだろう。 ではなぜ彼はそこまでわかっていたのだろうか、 それは当然両親の血液型から判断したに違いない。 ここで両親の血液型からBBだと判断される場合について考えてみる。 この場合両親共にBの要素をもっていなければならないので、 AB型、またはB型のはずである。 そしてOの要素を持つ可能性がないことを保証するためには、 両親共にAB型であり各々からBの要素を受け継いだ場合しか有り得ない。 しかし、AB型はただでさえ少ないので、両親がともにAB型であるとは 確率的に考えにくいだろう。 従って私の場合のように、両親の一方がBを持ち得ない血液型 であることからBOだと推測したに違いない。 ここまでの推理を話したところ 「つまんない」 と言われてしまった。 どうも会話の主旨を取り違えていたようである。
8月9日(金)ムーンライト 球体への光の当たり具合いをヒントに、光源と光を遮蔽するブロックを 各列一つずつ配置するパズル。 オリジナルパズルを作る過程において、用いたい概念を適切に表現するために、 そのパズルでのみ有効な記号を使うということが稀に起こるが、 このパズルがまさにそのような場合である。 光を反射する球体を他のパズルで使うことはたぶんないだろう。 このパズルのオリジナリティを自ら落とすことになるが、 「ムーンライト」は内部にヒントのあるABCプレースとして見ることができる。 光の当たっている面は「光源が手前にある」ということであり、 光の当たっていない面は「ブロックが手前にある」 または「その方向には何もない」ということである。 従って「ブロック」と「何もない」を同じに見ていることを除けば 内部にヒントがあるABCプレースと見なすことができる。 しかし、光というキーワードを使って「ブロック」と「何もない」を 自然な形で同じに見せるということこそが、このパズルの最大のアイデアである。 内部にヒントのあるABCプレースを作ろうとした場合、 最大の難点がその方向に何もない場合の処理である。 「何もない」というヒントを与えては無条件でそこに何も入らないことが わかってしまうので、わざとらしくその箇所のヒントを伏せておくしかないが、 その場合「ある記号だけが入らない」というヒントも同時に奪ってしまう。 しかし、「ブロック」と「何もない」を光が当たっていないという ヒントで同値化することで、何もない場合にも、ブロックが入る可能性を残しつつ、 手前には光源が来ないというヒントを表現できるのである。
8月8日(木)カラークロス 赤、青、黄、同士をそれぞれその色の線で結ぶパズル。それらの線は絡み合っており、 交差点にはそれらが混ざったときの色がヒントとして表示されている。 ネタに困ったら使いたくなるのがこの「カラー」である。 カラーを使うことの最大の利点は当然「見栄えが良くなる」ことであり、 ABC等の記号を赤、青、黄、の色として表現するだけでも 第一印象が華やかに見える。(紙面で解くにはただ面倒なだけだが) だがしかし、それだけの理由で使うわけにはいかない。カラーを使う必然性が欲しい。 というわけで、パズルにカラーを用いる場合「混ざって他の色になる」という 特徴を使う場合がほとんどであり、このパズルにもそれが用いられている。 先ほど「見栄えが良くなる」だけで使うわけにはいかないと書いたが、例外もある。 解くと絵が出るようなパズルの場合、これを記号で代用するわけにはいかないだろう。 他にカラーを用いる理由としては、線に種類を持たせるというのがある。 面のように広さをもった区域であれば記号を使って識別できるのだが、 線ではそうはいかない、そこで色によって線を識別させようというわけである。 紙の上で解くときにはペンの持ちかえが面倒なので、 ある意味、画面上で解く方が向いているパズルと言えるだろう。
8月7日(水)スライドナンバー 数字の書かれたプレートを上下に動かし、どの列も左から右にだんだん数字が大きく なるようにする。とりあえず動かしとけって感じのパズル。 理詰めでも解けないことはないが、このパズルは、 あーでもない、こーでもないと試行錯誤を楽しむことをお勧めしたい。 (私はそういうパズルはあまり好きではないが、あってもいいと思う。) 最初はその列に入る数字を上に表示するだけで動かすようなことはなかったのだが、 せっかく画面上で解くのだからそういうタイプの解答手法もあったほうが 良いだろうということで現在の形式になった。 今から考えるとよくそんな手間のかかることをやったなと思う。 さすが始めたばかりの頃はやる気があって大変よろしい。 それほど思い入れのあるパズルではないのでコメントのネタがないのだが、 何とか絞り出すと、左から右に文字が辞書順に並ぶように、リストの言葉を縦に 入れていくパズルを以前作ったことがあり、それが基になっている。 しかし日本語の場合だと濁音や促音の扱いがややこしく 文字数も多いので順序がわかりづらい。 たぶんアルファベットのほうがこのパズルに向いているだろう。 (「ABCの歌」を歌わないとアルファベットの順序がわからない人には気の毒だが)
8月6日(火)角DEループ 頂点から伸びる二本の線の間の角度をヒントにループを作るパズル。 角度というアイデアは当時としては斬新だったと思う。 最初は四角のパズル面で考えていたのだが、90度と270度の区別がしにくい (入る線から右周りに何度、というように方向を付ける必要がある)ので、 現在のように三角のパズル面を用いて60度、120度、180度の3パターンの角度となった。 こうすることで、”必然性のある見た目の珍しさ”も出すことができた。 三角配置のパズルを作るにしても、”何故それが三角でなければ ならないのか”というようなことに結構こだわる方なので、 偶然にしても良かったのではないかと思う。 そしてもう一つ、三角にすることで四角版の最大の欠点を克服している。 その欠点とは入る線が決まると出る線が一意的に決まるために角度ではなく ”右”、”左”、”直”を用いても表現できてしまう点である。 これならばわざわざ角度を用いなくとも その方が直感的にわかりやすいので、そちらを用いるべきである。 (実際に激作塾で「右左折直進メイズ」というのがあった。) また、四角版で実現するもう一つの方法に、ループの内側と外側 という概念を用いるものがある。すなわちループを大きな多角形とし、 その内角として見ることで、90度と270度を区別することができるのである。 こちらの方は「陣取りループ」という名前でまったく同値のパズルがあった。 これは角度ではなく、その周りにループの内側に入るマスがいくつあるかと いうのをヒントにして解くのだが、 これもこの表現の方がずっと解りやすいと思う。 我ながら良い解説をした。
8月5日(月)シンメトリープレース どの列も記号の並びがどちら側から見ても同じになるように ●▲■を配置していくパズル。 天才オリジナリストの異名をもつ夏原正典氏の傑作「交互にプレース」 から何とか周囲の数字ヒントを取り除けないか試行錯誤しているうちに 思いついたパズルである。 自分でも心底良いできだと断言できる数少ないパズルである。 「新しい」、「美しい」、ついでに「面白い」の三本柱を見事に満たしている。 自分で書いてて恥ずかしくないかと思われそうなので、 このくらいにしておくが、とにかくそのくらい気に入っている。 「新しい」と「美しい」の人の判断を挟まない定義を不完全ながらしてみよう。 「新しい」はこれまでにないアイデアが使われているかどうかである。 これは人が感じることではない。 「美しい」はルールが簡潔であるかどうかである。 簡潔かどうかは独立したルールの個数によって判断すれば良い。 他に「自然な」ルールであるかどうかという要素もあるが、 とりあえずここではおいておく。 「新しい」「美しい」はルールを設計する段階である程度 考慮できるのだが「面白い」だけは個人差が大きすぎて、 積極的に「面白い」パズルを作るのは不可能である。 こればかりは「新しい」「美しい」を満たした上で、偶然に頼るしかない。 オリジナルパズルを作る上で「新しくない」ものはオリジナルとして失格、 「美しくない」ものはパズルとして失格だと思っているので、 せめてこの二つだけは何とかしたいと日頃から考えている。 (それができているとはいわない。)
8月4日(日)ラージorスモール 数字の列と、数字の大小に関係するヒントから答となる数字のパターンを導く うちで扱っているものの中ではちょっと異色のパズル。 「パスワードを打つよりも答をそのまま入力した方が早いんじゃないか」 というツッコミをいれられそうなパズルである。 ここに来る人ならおそらくご存じかと思うが、 答となる数字の組を予想して、 実際の答の中に使われてるもの(BLOW)の個数と、 位置もあっているもの(HIT)の個数をヒントに、 答となる数字の組を当てるというゲームがある。 (このゲームをプログラムしたことがあるという人も結構いるのではなかろうか) 例えば、 答:2641 予想:7613 ならば、HIT 1、BLOW 1である。 これと同じルールを用いた「マスターマインド」というパズルが このパズル(ラージorスモール)の基になっている。 このようにいくつかの入力と、それに対するレスポンスから 答となる文字列(数字とは限らない)を推理する形式のパズルは まだ色々できそうである。
8月3日(土)パワープラント 数字の入ったマス(発電所)から線(電線)を伸ばしてその数の世帯に 電気を供給するというパズル。 抽象的な概念を、現実にある具体的なものを用いて解き手に理解させるというのは パズル作りにおいては重要な手法である。 今回の場合、そういった意味はあまりないが、 ただの記号よりは家(矢印に見える?)の形をしていた方が、 見た目に楽しいので何もしないよりは、ちょっとはましだと思う。 このパズルの改造であるが、「家に重みを付ける」というのがある。 即ち、各家庭に必要な電力量を一定とするのではなく、 それぞれに値を付けるのである。 例えば発電所の数字が「6」ならば、1と2と3の重みが付いた家に電線をつなぐ といった感じである。 (典型的な拡張タイプの改造であり、全て「1」にすれば元のパズルと同値) これだけでは単にややこしくしただけで、それほど良いアイデアではないが、 ここで電力供給といったモチーフが生きてくる。 1、2、3の数字ごとに「家」、「大きい家」、「工場」などとグラフィックを 変えるのである。こうすることで、見た目がさらに楽しくなり、 数値計算のややこしさという本質から解き手の目をそらすことが可能である。 この「重み付け」という手法は結構いろいろなパズルに使えるので、一度お試しあれ。
8月2日(金)多数決プレース 周囲の「その列にはいる赤丸(青丸)の個数」と 「ブロック内に赤丸と青丸のどちらが多く入っているか(もしくは同数)」 をヒントに、赤丸と青丸を配置していくパズル。 多数決というアイデアは決して悪くはないのだが、それを使うために 私があまり好きではない「その列に入る○○の数」というサブルールを用いている。 これを使っているだけあって問題は非常に作りやすい。 紙の上で解くのであれば、赤丸のみ入らない、青丸のみ入らないなどの チェックができるが、画面上ではそれができないので結構きついかもしれない。 (※決して出来ないことはないが、作者が面倒なのでやらないだけである。) また、紙の上で問題を出すなら赤丸青丸より白丸黒丸を使って、 ブロック内の色も、白黒灰色にすべきだろう。 多数決は全然関係ないのだが、「上と左、右と下」タイプのヒントを用いて 二色使った新しいカラーお絵かきロジックが可能である。 普通のカラーお絵かきロジックのヒントでは上から下、左から右への、 入る色の順番がわかるようになっているが、 これを色によって独立させるのである。 例えば赤と黒の二色を用いた場合、 赤は左から順に1、2、3個連続して塗る。 黒は左から順に4、5個連続して塗る。 というように、各色ごとの塗り潰すマスの位置関係はわかるが、 他の色との位置関係が伏せられているというものである。 一応、色の種類はいくつでも可能だが二色に限れば、 上と左、右と下に各色のヒントを自然なデザインで配置できる。
8月1日(木)リメイズ ○は分かれ道、×は行き止まりというヒントから「迷路を復元する」という これまでにありそうで無かったパズル。 パズルの完成形の構造には、ループや二点間のリンク等様々なものがあるが、 意外にもこのパターンはこれまで一発ネタ以外では見たことがなかった。 「迷路の復元」というタイプのパズルでもっといろいろな手法が考えられると思う。 解き手にとってはどうでも良いことだが、 作る際に結構別解が発生しやすいのが難点である。 パズルの「型」ではなく「問題」について言及すると、 stage4は、当初考えていた解く過程が、問題をチェックしているときに 使えないことに気付き(他の可能なパターンを見落としていた)、 またやり直しかと思ったものの、あきらめきれず無理やり仮定を幾重にも 繰り返して無理やり解いてみたら…何と解けてしまったのである。 これ幸いと、そのまま載せたので、 この面だけは異常な難しさになっている。(またそれか) 迷路といえば、小学校低学年のときに迷路を作るのにはまっていた。 テストを早めに終わらせたときなどは、残り時間中、 ずっと答案用紙の裏にせっせと迷路を書いていたように思う。 迷路の楽しみ方にもいろいろと工夫を凝らしていた。 まず、大きめの紙を用意してその中央に小さな穴を空け、 そして、その穴を通して迷路を解き進めるのだ。 するとその穴の範囲しか迷路の様子がわからないので、 あたかも自分が巨大迷路の中にいるかのような 感覚を味わうことができるというわけである。 それから新聞に載っている迷路を切り抜いてコレクションしたりもした。 あれらは今どこにあるのだろうか。
7月31日(水)ルートマップ そのマスが属するブロック内で何番目に通過するマスであるかを 表す数字をヒントにスタートからゴールまで線を引くパズル。 最初は「ブロック内で何番目」ではなく、「各列で何番目」に通過するマスで あるかを縦と横で別々に表示していたのだが、 わかりにくいのでどうしようかと考えていたときに ブロックを使うことを思いついた。 思いついてしまえばコロンブスの卵である。 なぜ最初に思いつかなかったのか不思議に思う。 このパズル、実はweb上での公開用に作られた初のパズル。 これを作るまでは、しばらくオリジナルパズル作りから離れており、 これまでに作った作品を放っておくのは惜しいので 多くの方に見てもらえるようにホームページに載せよう (面倒なので問題は雑誌に投稿したものをそのまま使い回し) という、どうでもいい目的でアプレットを作っていたのだが、 この作品から、再びオリジナルパズル創作意欲に火がつき(久々に使ってみた)、 「自分が新しいものを作らねば誰が作るのだ!」 「定番パズル一辺倒のパズル界の体質をこの手で変えてみせる!!」 ということで、現在の製作動機は 「オリジナルパズルの開発、及びオリジナルパズルを作れる人材の発掘」 である。
7月30日(火) ディレクション 「そのマスに入る矢印が指している矢印の向き」をヒントに 矢印を配置していくパズル。 一読しただけでは、ちょっとわかりにくいルールだが、使うのはそれだけである。 欠点として、「個人的に解いてみてあまり面白くない」というのが挙げられる。 「適当に矢印を入れて、そこから順々に決まっていく矢印の列に矛盾が起きたら 最初に入れた矢印が間違っている」の単調な繰り返しで解けてしまうのである。 しかし、純粋に「方向」という概念のみを用いて作られているのは素晴らしい。 矢印の方向を指示している矢印もまた方向を指示されているという関係が 非常に面白いと思う。それに比べたら、上の不満など些細なことである。 とはいうものの、そこを重視する方もおられると思うので、(普通はするだろう) そんな方のために改良案として矢印が入らないマスがあるバージョンを考えてみよう。 このとき「そのマスに入る矢印が指している矢印の向き」というのは、 その方向の最も手前に入る矢印の向きという意味である。 こうすると、一カ所矢印を決めても、その先が連続して決まることがなくなる。 この場合、オリジナルのヒントだけでは「どこにも矢印が入らない」という 別解が存在するので条件を少し変更しなければならない。 こういう状況はオリジナルな型を作る上で結構でてくる。 解決策として、予めいくつかの矢印をヒントとしていれておく。 または、「空きマスは縦横に連続しない」など 空きマスに関する条件を追加するというのが考えられる。 他には矢印の個数、例えば「各列に入る矢印の数を指定する」という手法があるが、 作る際にあまり余分な自由度を加えたくないので、これはやめておこう。 上の二つであるが、私としてはなるべくルールを増やしたくないので、 いくつかの矢印をヒントとしていれておく方が良いと思う。 以上をふまえて問題を作ることをお薦めする。
7月29日(月) ペア・マーク 同じ組合わせのブロック同士は接しないようにパズル面にある記号を 二つずつペアにして分割していくパズル。 中学生の終わり頃に作った、私の記念すべき最初のオリジナル作品である。 以前にもオリジナルな型作りに挑戦したことはあったが、 パズルと呼べるような代物ではなかったので、事実上これを処女作とすべきであろう。 「ペア・ナンバー」という、数字を配置していくパズルが基になっている。 (ちなみにそちらは二つの数字をペアにして配置していくパズルである) 2マスという小さいブロックへの分割というのは結構珍しいのではないかと思う。 特に2マスでしか実現できないということはなく、 Nマスへ拡張することも容易に可能である。 3種類の記号を用いているので組合わせは6種類、まあ適当なところだろう。 使用する記号を4種類に増やして「同じ記号は組にならない」という条件を 追加すると組合わせは(4×3)÷2=6種類となり、これでも良いと思う。 後者の場合は、同じ記号が接している箇所に線を引くことができるので、 最初のとっかかりとして、それを用いることが可能である。 初心者や作り手にとってはこちらの方が扱いやすいだろう。 また、このパズルで用いられている接触禁ルールの代案として、 マークではなく数字を用いて、「和が同じブロック同士は接しない」 というのを考えたのだが、あまり面白くなさそうなのでやめた。
7月28日(日) ○×アンサー よくある正直者とうそつきを当てる問題を、アレンジしたパズル。 全体として矛盾が起こらないように命題が真か偽かを推理していく。 全ての命題は複雑に他の命題の真偽に関わっており、 その箇所だけを見れば簡単に推理できる場合でも 多数の命題の中から、真偽の決定が可能な部分だけを 探し出すのはなかなか困難である。 工夫次第でかなりいろいろな問題が作れそうなパズルである。 クロスナンバーの数字にストーリー性を組み込めるように、 このパズルも中に物語を持ち込むことが可能であると思う。 パズルの「型」ではなく「問題」について言及すると、 stage5は、当初考えていた解く過程が、問題をチェックしているときに 使えないことに気付き(他の可能なパターンを見落としていた)、 またやり直しかと思ったものの、あきらめきれず無理やり仮定を幾重にも 繰り返して無理やり解いてみたら…何と解けてしまったのである。 これ幸いと、そのまま載せたので、 この面だけは異常な難しさになっている。 話は変わるが、以前○×クイズを使ったゲームを考えたことがあるので、 ここで紹介しよう。 ゲームは二人で行い、各々最初に30点を持っている。 交互に○×クイズを出し合い、出された方は持ち点を○×に振り分ける。 間違った答に賭けた点は失われ、先に持ち点が無くなった方が負けである。 数回友人とやったことがあるが、予想される通り、 出されるクイズは大半がプライベートなものであり、 コインでも投げた方が良いのではないかと思える内容であった。
7月27日(土) サブセットリンク {A,B,C,D}の全ての部分集合を、包含関係を満たすように マスに当てはめていくという、これまた理系っぽいパズル。 なぜか問題が自動生成だけという、ちょっと変わった境遇のパズルである。 基本的に問題が4×4でしか作れないというのは辛いが、 Aは含む、Bは含まないというように一つのマスが部分的に決まっていくのは面白い。 包含記号がないところはヒントがないわけではなく、”包含関係がない” というヒントになっているので、そこは要注意である。 このアイデアは、言語系のパズルにも応用が効くと思う。というよりむしろ その方が良いかもしれない。つまり、{A,B,C,D}の部分集合の変わりに、 文字の集合である単語を用いるのである。ある単語Aを構成している文字 全てを単語Bが含んでいれば、A⊂Bである。 例)いす⊂すいか⊂いかすみ 文字ではなく漢字の部品を使うものを作ったことがあるが、 例)口⊂日⊂白⊂自⊂首⊂道⊂導 ちゃんと存在している漢字を使わなければならないので、 含む含まれるの関係が縦横無尽に入り乱れるという状況を作るのはなかなか困難。 この手のパズルにおいて、どこまでを「含む」と見なすかの 判断が難しいので、その辺りの処理をどうするかが問題である。
7月26日(金) 阿弥陀 縦線の間に条件を満たすようにいくつかの横棒を入れて、 上と下の記号をおなじみ「あみだくじ」の要領で結ぶパズル。 あみだくじに関してはあまり良い思い出がないのだが、 それはさておきパズルの説明に入る。 「曲がる回数」と「列にはいる線の本数」という2種類の数値を 併用している点は気に入らないが、当然その分とっかかりも豊富で 問題としてはなかなか楽しめるのではないかと思う。 最初は「列にはいる線の本数」のヒントはなかったのだが、 これをつけないとパズルにならないので渋々追加した。 その後何とかならないものかと、いろいろ考えた末「サム阿弥陀」という 語呂が良いのか悪いのか良くわからないパズルを作ってみた。 ルールを簡単に説明すると、横棒を引くべき場所に数字が書かれており、 そこを通過するごとにその数字を加算して、その合計が上に書かれている 数字と一致するようにするというものである。 「阿弥陀」での横棒の役割は、本来のあみだくじと同じく コースを入れ替えることにあったのだが、 その作品では横棒を通過すること自体に意味を持たせている。 数字の和を使っているところにありきたりの感があるが、 通過箇所に何らかの記号を配置し、それをヒントに用いるというのは悪くないと思う。 これで数字以外の表現が何かできないだろうか。 数少ない自動生成版が作られているパズルだが、このパズルだけは他と違い 人間的な作り方ではなく、全探索によって問題が作成されている。 つまり、考えられ得る全ての線の引き方(ある程度の枝葉は刈っている) を試して答が唯一だったら出力するというとんでもない作り方である。 暇で暇でどうしょうもない人は、是非記録に挑戦してほしい。
7月25日(木) 軌跡の地球 二頂点間の径路長をヒントに全体が木構造になるように、辺を配置していくパズル。 珍しくデザインが凝っている。 元は「グラフコネクション」という名前で、 情報数理の「グラフ理論※」の講義中に思い付いたという とっても生活感溢れる?パズルである。 元々はAだかBだかを繋ぐだけで、航路という設定ではなかったが、 その方がわかりやすいだろうということで国をつなぐことにした。 「軌跡の地球」は地球のグラフィックを頼んだ友人につけられた名前で 決して私のセンスではない。 升目にとらわれないデザインと、全体の構造を考えつつ、記号間の 繋がりを少しずつ決定していく解き味が斬新。 また、数学的価値という点では、うちのパズルではダントツであろう。 唯一解になるときのヒントの条件を調べてみるのも面白いと思う。 ただ、頂点数が少ないと木の種類もあまりないので、 似たような問題になってしまい、解かせ方のバリエーションが少ないのが難点。 かなり無理がある設定なのだが、以前年賀状ネタに、 解くと文字が出るバージョンを作った覚えがある。 確か「辰」がでてきたはずだが…。 解かなくても何となくわかってしまいそうな感じ(漢字でも可)ではある。 ちなみに私は、年賀状を毎年暗号で出すのだが、 でてくる言葉は大抵「ことしもよろしく」なので 解かずともちゃんとわかってもらえるところが味噌である。 ※グラフ理論…頂点とそれを結ぶ辺から成る構造に関する様々な性質を調べる学問。 決して棒グラフなどを想像してはいけない。 ケーニヒスベルクの橋渡りに端を発するという話は微妙に有名。
7月24日(水) ラインクロス 数字の入ったマスから、上下左右どちらか一方向に線を延ばし、 線は「その数だけ他の線と交わるようにする」というパズル。 問題図は地味だが、完成図は回路図を思わせるようで、 なかなか気に入っている。 はじめは二つの数字の間を縦横斜めの線で結ぶタイプだったのだが、 その場合「同じ数字を結ぶ」という余分な要素が入ってくるので、 試行錯誤の末、伸ばし系のパズルに変更となった。 それで問題を作り始めたのは良いのだが、 当初「先端は必ず交差している」というルールが無かったので、 線を余計に延ばすという別解が多発。 それでも何とか仕上げたのだが、不必要に手間がかかることに気付き、 上のルールを追加した。 プログラムが非常に面倒くさいので最初にこれを選んで本当に良かったと思う。 今だったら冗談抜きで絶対に実現しないだろう。 伸ばし系のパズルに変更となったわけだが、当初の方法でも 数字と非数字の記号をつなぐという構造を用いれば、それほど悪くないと思う。 それでも伸ばす方向がある程度限定されてしまい、簡単になることが予想されるので、 一般に記号は全て使いきるのが普通だが、数字よりも非数字の割合を多くして 非数字を全て使いきる必要を無くせば丁度良いくらいの難度になり、 非数字の割合を調節することで難度のコントロールもある程度効くと思う。

SINCE 2002 制作 稲葉 直貴